金子尚樹
日本の映画・テレビ業界において、独自の技と熱意をもって数々の作品に息吹を吹き込んだ編集技師、金子尚樹（かねこ なおき、1958年1月22日 - 2021年1月13日）。62歳で惜しまれつつ世を去るまで、多岐にわたる活動を展開しました。
金子氏は、まさに映画の家系に生まれました。東宝の元重役である綾部正直氏を叔父に持ち、父・金子半三郎氏もまた、黒澤明や溝口健二といった巨匠の作品を手がけた東宝編集部のベテラン編集技師でした。父は東宝争議を経て新東宝へ移り、後に独立して金子編集室を設立しています。こうした環境に影響を受け、金子尚樹氏も自然な流れで映像の世界へと足を踏み入れました。
キャリアの初期には助監督として、主に小林悟監督に師事しました。その後、父である半三郎氏の編集助手として、編集の道を本格的に歩み始めます。父が他界した後は、その技術と志を受け継ぎ、金子編集室の代表を務めました。
1990年12月には、自身の会社となる有限会社フィルム・クラフトを設立し、活動の基盤を固めます。また、編集技師の浦岡敬一氏を師と仰ぎ、彼と共に編集集団「エディターズ・ノア」の立ち上げに参加。浦岡氏をはじめ、福田憲二、井上秀明、石原肇、今野治人、矢船陽介といった才能ある編集技師たちと共に、協働することで互いの技術を高め合いました。
金子氏自身の編集技師としての手腕は高く評価され、多くの監督から厚い信頼を得ました。特に、小林政広監督の作品においては、その一本目から編集を担当し、監督の世界観構築に不可欠な存在となりました。他にも、サトウトシキ、浜野佐知、三村順一、岡田主、加藤義一、竹洞哲也といった多様な監督たちの作品を手がけ、そのキャリアを通じて幅広いジャンルの映像編集に携わっています。
金子氏の貢献は、編集技術の向上だけにとどまりません。多くの後進育成にも情熱を注ぎ、矢船陽介、堀善介、清野英樹、張本征治、目見田健など、現在の映像業界を支える多数の編集技師を育て上げました。
その編集技術は、数々の受賞によっても証明されています。2006年には、編集を担当した映画『バッシング』で、日本映画テレビ技術協会の第6回映像技術賞・映像技術奨励賞を受賞。さらに2010年には、映画『春との旅』で、第20回日本映画批評家大賞・編集賞（浦岡敬一賞）を受賞するなど、その功績は高く評価されました。
編集の第一線で活躍する傍ら、活動の幅を広げました。2009年4月には、友人である西田和昭氏と共に映画製作会社「株式会社studio108」を設立し、『女理髪師の恋』『ホペイロの憂鬱』『戦車闘争』などの製作にも関わっています。また、無類の車好きとしても知られ、友人のディーラーに同行してドイツまで取材旅行に出かけるほどの情熱を持っていました。
晩年には、日本の映画批評の発展にも寄与すべく、2019年5月1日より日本映画批評家大賞機構の代表理事を務めました。しかし、2021年1月13日、心臓病のため62歳で急逝。日本の映像編集界にとって、大きな損失となりました。
父から子へと受け継がれた編集の技術と情熱は、金子尚樹氏によってさらに多くの作品へと広がり、多くの後進へと伝えられました。日本の映画・テレビ界における彼の多大な功績は、今後も長く語り継がれるでしょう。
主な作品
製作
女理髪師の恋 (2003)
ホペイロの憂鬱 (2018)
戦車闘争 (2020)
編集
風の谷のナウシカ (1984)
おもひでぽろぽろ（1991）
軍艦武蔵(1992)
ドライビング・ハイ!(1993)
第1回[欽ちゃんのシネマジャック]
行楽猿(1993)
シーズ・レイン(1993)
第2回[欽ちゃんのシネマジャック]
ラブソング(1994)
モンタの冒険II バック・トゥ・ザ・ゲスイドウ(1994)
[幽☆遊☆白書 冥界死闘篇 炎の絆]
急にたどりついてしまう(1995)
お天気お姉さん(1995)
[LUNATIC]
不法滞在(1996)
[シークレットワルツ]
泥棒貴族 ボディハンター(1996)
ホモサピエンス(1996)
CLOSING TIME(1997)
赤い犯行 夢の後始末(1997)
まむしの兄弟(1997)
六本木フェイク 傷だらけの天使たち(1997)
平成名探偵 阪田京介(1997)
ROMANTIC MANIA(1997)
安藤組外伝 群狼の系譜(1998)
BREAK HEAT バクの胃袋を開け！(1998)
Body Thrill ボディ・スリル(1998)
酔夢夜景(1998)
BOOTLEG FILM＜海賊版＝BOOTLEG FILM＞(1999)
発熱天使(1999)
天使の楽園(1999)
新GONIN(2000)
KOROSHI 殺し(2000)
REQUIEM of DARKNESS クラヤミノレクイエム(2000)
今昔伝奇 剣地獄 CHANG・BALLA(2001)
歩く、人(2001)
[修羅の群れ]
実録 ヒットマン 妻 その愛(2002)
LADY DROP レディ・ドロップ(2002)
実録ヒットマン 北海の虎 望郷(2003)
YUMENO ユメノ(2004)
ビタースイート Bitter Sweet(2004)
フリック(2004)
[ギミー・ヘブン]
[恋するトマト]
[そうかもしれない]
MAZE マゼ ～南風～(2005)
猿飛佐助II 闇の軍団(2005)
花井さちこの華麗な生涯(2005)
バッシング(2005)
こほろぎ嬢(2006)
[棚の隅]
幸福 Shiawase(2006)
[愛の予感]
休暇(2007)
宮城野 ＜ディレクターズカット版＞（2008年）
三色映画 UFO食堂(2008)
島田洋七の佐賀のがばいばあちゃん(2009)
白夜(2009)
[春との旅]
ワカラナイ(2009)
三色映画 そぼろごはん(2010)
百合子、ダスヴィダーニヤ(2011)
カルテット!〜Quartet!〜(2011)
刹那 SETSUNA(2011)
不良少年 3,000人総番(アタマ)(2012)
日本の悲劇(2013)
非金属の夜(2013)
ネオン蝶 第一幕(2013)
ネオン蝶 第二幕(2013)
キタキツネ物語35周年リニューアル版(2013)
東京闇虫パンドラ(2014)
ベトナムの風に吹かれて(2015)
コンビニ夢物語(2016)
中野JK退屈な休日(2016)
イタズラなKiss THE MOVIE(2016)
イタズラなKiss THE MOVIE2(2017)
グッバイエレジー(2017)
海辺のリア(2017)
もうろうをいきる(2017)
イタズラなKiss THE MOVIE3(2017)
ホペイロの憂鬱(2018)
ゆずりは(2018)
[雪子さんの足音]
合間にて…(2019)
トリカゴ(2019)
夜へ…(2020)
銀幕彩日(2020)
ポストプロダクション
[Dead BEAT]
BOOTLEG FILM＜海賊版＝BOOTLEG FILM＞(1999)
鉄 平成侠客伝(1999)
KOROSHI 殺し(2000)
通貨と金髪(2000)
HYSTERIO(2000)
不確かなメロディー(2000)
突破者太陽傳(2000)
獅子の血脈(2001)
荒ぶる魂たち(2001)
今昔伝奇 剣地獄 CHANG・BALLA(2001)
岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説 Episode1(2001)
今昔伝奇 花神 Flowers(2001)
完全なる飼育 愛の40日(2001)
今昔伝奇 座敷童百物語 100Tales(2001)
DOG STAR(2002)
Jam Films Pandora -Hong Kong Leg-(2002)
もんしぇん(2005)
[太陽の傷]
[恋空]
ぼくのおばあちゃん(2008)
JOHNEN 定の愛(2008)
プライド(2008)
Dear Heart 震えて眠れ(2009)
三色映画 嘘つき女の明けない夜明け(2009)
苦い蜜、消えたレコード(2010)
星砂の島のちいさな天使 〜マーメイドスマイル〜(2010)
[もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら]
ギリギリの女たち(2012)
[今日、恋をはじめます]
クローバー(2014)
いのちのコール ミセスインガを知っていますか(2014)
[サムライせんせい]
その他
平成刺客伝 鉄(1999)
歩く、人(2001)
LADY DROP レディ・ドロップ(2002)
マブイの旅(2002)
龍虎兄弟 BLOOD BROTHERS(2002)
すてごろ 梶原三兄弟激動昭和史(2003)
許されざる者(2003)
新影の軍団III 地雷花(2003)
SEMI 鳴かない蝉(2003)
[HEAT -灼熱-]
CM
* 日興証券
金子氏は、まさに映画の家系に生まれました。東宝の元重役である綾部正直氏を叔父に持ち、父・金子半三郎氏もまた、黒澤明や溝口健二といった巨匠の作品を手がけた東宝編集部のベテラン編集技師でした。父は東宝争議を経て新東宝へ移り、後に独立して金子編集室を設立しています。こうした環境に影響を受け、金子尚樹氏も自然な流れで映像の世界へと足を踏み入れました。
キャリアの初期には助監督として、主に小林悟監督に師事しました。その後、父である半三郎氏の編集助手として、編集の道を本格的に歩み始めます。父が他界した後は、その技術と志を受け継ぎ、金子編集室の代表を務めました。
1990年12月には、自身の会社となる有限会社フィルム・クラフトを設立し、活動の基盤を固めます。また、編集技師の浦岡敬一氏を師と仰ぎ、彼と共に編集集団「エディターズ・ノア」の立ち上げに参加。浦岡氏をはじめ、福田憲二、井上秀明、石原肇、今野治人、矢船陽介といった才能ある編集技師たちと共に、協働することで互いの技術を高め合いました。
金子氏自身の編集技師としての手腕は高く評価され、多くの監督から厚い信頼を得ました。特に、小林政広監督の作品においては、その一本目から編集を担当し、監督の世界観構築に不可欠な存在となりました。他にも、サトウトシキ、浜野佐知、三村順一、岡田主、加藤義一、竹洞哲也といった多様な監督たちの作品を手がけ、そのキャリアを通じて幅広いジャンルの映像編集に携わっています。
金子氏の貢献は、編集技術の向上だけにとどまりません。多くの後進育成にも情熱を注ぎ、矢船陽介、堀善介、清野英樹、張本征治、目見田健など、現在の映像業界を支える多数の編集技師を育て上げました。
その編集技術は、数々の受賞によっても証明されています。2006年には、編集を担当した映画『バッシング』で、日本映画テレビ技術協会の第6回映像技術賞・映像技術奨励賞を受賞。さらに2010年には、映画『春との旅』で、第20回日本映画批評家大賞・編集賞（浦岡敬一賞）を受賞するなど、その功績は高く評価されました。
編集の第一線で活躍する傍ら、活動の幅を広げました。2009年4月には、友人である西田和昭氏と共に映画製作会社「株式会社studio108」を設立し、『女理髪師の恋』『ホペイロの憂鬱』『戦車闘争』などの製作にも関わっています。また、無類の車好きとしても知られ、友人のディーラーに同行してドイツまで取材旅行に出かけるほどの情熱を持っていました。
晩年には、日本の映画批評の発展にも寄与すべく、2019年5月1日より日本映画批評家大賞機構の代表理事を務めました。しかし、2021年1月13日、心臓病のため62歳で急逝。日本の映像編集界にとって、大きな損失となりました。
父から子へと受け継がれた編集の技術と情熱は、金子尚樹氏によってさらに多くの作品へと広がり、多くの後進へと伝えられました。日本の映画・テレビ界における彼の多大な功績は、今後も長く語り継がれるでしょう。
主な作品
- ---
製作
女理髪師の恋 (2003)
ホペイロの憂鬱 (2018)
戦車闘争 (2020)
編集
風の谷のナウシカ (1984)
おもひでぽろぽろ（1991）
軍艦武蔵(1992)
ドライビング・ハイ!(1993)
第1回[欽ちゃんのシネマジャック]
行楽猿(1993)
シーズ・レイン(1993)
第2回[欽ちゃんのシネマジャック]
ラブソング(1994)
モンタの冒険II バック・トゥ・ザ・ゲスイドウ(1994)
[幽☆遊☆白書 冥界死闘篇 炎の絆]
急にたどりついてしまう(1995)
お天気お姉さん(1995)
[LUNATIC]
不法滞在(1996)
[シークレットワルツ]
泥棒貴族 ボディハンター(1996)
ホモサピエンス(1996)
CLOSING TIME(1997)
赤い犯行 夢の後始末(1997)
まむしの兄弟(1997)
六本木フェイク 傷だらけの天使たち(1997)
平成名探偵 阪田京介(1997)
ROMANTIC MANIA(1997)
安藤組外伝 群狼の系譜(1998)
BREAK HEAT バクの胃袋を開け！(1998)
Body Thrill ボディ・スリル(1998)
酔夢夜景(1998)
BOOTLEG FILM＜海賊版＝BOOTLEG FILM＞(1999)
発熱天使(1999)
天使の楽園(1999)
新GONIN(2000)
KOROSHI 殺し(2000)
REQUIEM of DARKNESS クラヤミノレクイエム(2000)
今昔伝奇 剣地獄 CHANG・BALLA(2001)
歩く、人(2001)
[修羅の群れ]
実録 ヒットマン 妻 その愛(2002)
LADY DROP レディ・ドロップ(2002)
実録ヒットマン 北海の虎 望郷(2003)
YUMENO ユメノ(2004)
ビタースイート Bitter Sweet(2004)
フリック(2004)
[ギミー・ヘブン]
[恋するトマト]
[そうかもしれない]
MAZE マゼ ～南風～(2005)
猿飛佐助II 闇の軍団(2005)
花井さちこの華麗な生涯(2005)
バッシング(2005)
こほろぎ嬢(2006)
[棚の隅]
幸福 Shiawase(2006)
[愛の予感]
休暇(2007)
宮城野 ＜ディレクターズカット版＞（2008年）
三色映画 UFO食堂(2008)
島田洋七の佐賀のがばいばあちゃん(2009)
白夜(2009)
[春との旅]
ワカラナイ(2009)
三色映画 そぼろごはん(2010)
百合子、ダスヴィダーニヤ(2011)
カルテット!〜Quartet!〜(2011)
刹那 SETSUNA(2011)
不良少年 3,000人総番(アタマ)(2012)
日本の悲劇(2013)
非金属の夜(2013)
ネオン蝶 第一幕(2013)
ネオン蝶 第二幕(2013)
キタキツネ物語35周年リニューアル版(2013)
東京闇虫パンドラ(2014)
ベトナムの風に吹かれて(2015)
コンビニ夢物語(2016)
中野JK退屈な休日(2016)
イタズラなKiss THE MOVIE(2016)
イタズラなKiss THE MOVIE2(2017)
グッバイエレジー(2017)
海辺のリア(2017)
もうろうをいきる(2017)
イタズラなKiss THE MOVIE3(2017)
ホペイロの憂鬱(2018)
ゆずりは(2018)
[雪子さんの足音]
合間にて…(2019)
トリカゴ(2019)
夜へ…(2020)
銀幕彩日(2020)
ポストプロダクション
[Dead BEAT]
BOOTLEG FILM＜海賊版＝BOOTLEG FILM＞(1999)
鉄 平成侠客伝(1999)
KOROSHI 殺し(2000)
通貨と金髪(2000)
HYSTERIO(2000)
不確かなメロディー(2000)
突破者太陽傳(2000)
獅子の血脈(2001)
荒ぶる魂たち(2001)
今昔伝奇 剣地獄 CHANG・BALLA(2001)
岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説 Episode1(2001)
今昔伝奇 花神 Flowers(2001)
完全なる飼育 愛の40日(2001)
今昔伝奇 座敷童百物語 100Tales(2001)
DOG STAR(2002)
Jam Films Pandora -Hong Kong Leg-(2002)
もんしぇん(2005)
[太陽の傷]
[恋空]
ぼくのおばあちゃん(2008)
JOHNEN 定の愛(2008)
プライド(2008)
Dear Heart 震えて眠れ(2009)
三色映画 嘘つき女の明けない夜明け(2009)
苦い蜜、消えたレコード(2010)
星砂の島のちいさな天使 〜マーメイドスマイル〜(2010)
[もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら]
ギリギリの女たち(2012)
[今日、恋をはじめます]
クローバー(2014)
いのちのコール ミセスインガを知っていますか(2014)
[サムライせんせい]
その他
平成刺客伝 鉄(1999)
歩く、人(2001)
LADY DROP レディ・ドロップ(2002)
マブイの旅(2002)
龍虎兄弟 BLOOD BROTHERS(2002)
すてごろ 梶原三兄弟激動昭和史(2003)
許されざる者(2003)
新影の軍団III 地雷花(2003)
SEMI 鳴かない蝉(2003)
[HEAT -灼熱-]
CM
* 日興証券
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。