戸令

とは



(こりょう)は、古代日本の律法において、戸(現在の世帯に近い概念)に関する行政規則を定めた法典です。養老においては、全45条から構成され、戸籍、税制、家族、身分など、当時の社会構造を規定する上で非常に重要な役割を果たしました。戸は、律の戸婚律と対をなすもので、中国の律法を参考にしつつも、日本の社会実情に合わせて独自の発展を遂げました。

中国と日本の戸の違い



中国では、晋の時代から元に至るまで一貫して戸が設けられていました。日本においても、飛鳥浄御原の段階で既に戸が存在したとする見方があります。しかし、中国と日本では社会構造が大きく異なっていたため、戸の内容にも大きな違いが見られます。

中国では、官吏の選考基準である学・考課・選挙と関連付けられ、地域区分も里(坊)・保の人為的な区分と、村・隣の自然的な区分の二本立て構造でした。一方、日本では、田・賦役など班田や各種賦課のための規定との関連性が強く、里(坊)・保の人為的な区分に一元化されています。

また、財産分割や遺産相続に関する規定(応分条)も異なっていました。中国では、同居共財の財産を兄弟で分割相続する原則でしたが、日本では、氏族や戸主の財産の存続・保全を重視し、嫡子の得分を多くする嫡庶異分主義が採用されました。これらの違いから、日本の戸は、中国の制度をそのまま導入したのではなく、日本の実情に合わせて大幅な改変が行われたことがわかります。特に、大宝と養老の間では、戸は大幅に改正されたと考えられています。

養老における戸の内容



養老における戸では、50戸を1里(後に1郷)とし、里長を置いて徴税などを行いました。また、5戸を1保とし、保長を置いて、保の構成員である戸が逃亡した場合、保全体で捜索義務を負いました。各家の家長は戸主として戸口を統率し、戸口は年齢によって、黄(3歳以下)、小(16歳以下)、中(20歳以下)、老丁(男子61歳以上)、耆(66歳以上)、そして正丁(21歳から60歳までの心身健全な男子)に区分されました。さらに、80歳以上の高齢者や重病を患う者には、侍が付けられました。

戸主や戸口は、計帳・戸籍に登録されました。計帳は毎年作成され、戸籍は6年に一度作成されました。戸籍は、最初の戸籍である庚午年籍は永久保存とされましたが、その他は30年間保存されるものとされました。婚姻は、男性15歳以上、女性13歳以上で認められ、離縁に関する法も定められました。

財産継承に関しては、故人の遺志が明確でない場合、嫡母・継母・嫡子は2分、庶子は1分、妾および女子は男子の半分で配分されました。また、賎民に関する身分や婚姻、放賎従良などについても規定されました。

の役割



は、戸籍や各戸に対する支配行政を行う国司の国内巡行に関する規定や、国司郡司に対する評価に関する規定も設けていました。これにより、租税の円滑な徴収と、徳治・勧農が求められました。戸は、古代日本の社会構造を維持するための重要な役割を果たしていたと言えるでしょう。

まとめ



は、古代日本の律法における重要な法典であり、戸籍、税制、家族構成、身分制度など、多岐にわたる社会制度を規定していました。中国の制度を参考にしつつも、日本の実情に合わせて独自の発展を遂げた点が特徴です。戸の研究は、古代日本の社会構造を理解する上で欠かせない要素です。




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