戸定邸

戸定邸：水戸徳川家ゆかりの歴史的建造物

戸定邸は、千葉県松戸市に位置する、旧水戸藩主徳川昭武の別邸として知られる歴史的建造物です。国の重要文化財に指定されているこの邸宅は、明治期の華麗な雰囲気を今に伝え、隣接する庭園とともに、訪れる人々に深い感動を与えます。

歴史的背景

松戸は、江戸時代には水戸街道の宿場町として栄え、水戸藩との関わりが深い土地でした。戸定邸は、江戸川を望む高台に1884年（明治17年）に完成しました。この場所は、かつて松戸城の外郭であったことから「戸定」と名付けられました。

明治時代には、徳川昭武の兄である元将軍徳川慶喜も度々訪れ、写真撮影や狩猟、陶芸などを楽しんだとされています。また、皇族も長期滞在するなど、由緒ある屋敷として知られています。

1892年（明治25年）には、徳川昭武の子である徳川武定が子爵を授けられ、戸定邸は松戸徳川家の本邸となりました。

建築構造

戸定邸は、木造平屋一部2階建てで、延床面積は約725平方メートルです。9棟の建物に23の部屋があり、そのうち8棟が国の重要文化財に指定されています。建物は、表座敷棟を中心に、渡り廊下で各棟が連結されている構造です。表座敷棟には、客間や書斎があり、透かし彫りの板欄間や竹細工の欄間など、細部にまで意匠が凝らされています。

浴室は、脱衣場と浴室が分かれており、天井は杉板網代組（網代天井）で仕上げられています。建物全体が、明治前期の上流階級の住宅様式を今に伝える貴重な建築物です。

旧徳川昭武庭園

戸定邸に隣接する旧徳川昭武庭園は、日本最古の現存する洋風庭園の一つとして知られ、国の名勝に指定されています。庭園は、徳川昭武が欧米留学で得た知識をもとに、1884年（明治17年）から本格的な造園が行われ、1890年（明治23年）に完成しました。庭園は、書院造庭園と東屋庭園の2つの区画に分かれています。

広大な芝生を中心とした平地部分と、なだらかな築山が配置され、イヌマキが植えられているのが特徴です。庭園は、スダジイ、クヌギ、コナラなどの林に囲まれており、借景を取り入れた設計がされています。2018年には、徳川昭武が撮影した写真を基に、盛り土の削りや飛び石、樹木などが復元され、往時の姿が蘇りました。

戸定が丘歴史公園

戸定邸とその周辺は、戸定が丘歴史公園として整備され、一般公開されています。公園内には、戸定邸のほか、戸定歴史館や茶室「松雲亭」があり、歴史と文化に触れることができます。

戸定歴史館では、松戸徳川家や徳川慶喜家の資料が展示され、幕末から明治にかけての国際交流の様子や、徳川慶喜・昭武兄弟が撮影した写真などが公開されています。また、茶室「松雲亭」では、庭園の美しい景色を眺めながら、静かなひとときを過ごすことができます。

沿革

戸定邸は、1882年（明治15年）に建設が開始され、1884年（明治17年）に完成しました。その後、徳川昭武とその家族が居住し、多くの歴史的な出来事がこの地で繰り広げられました。

1889年（明治22年）には、徳川慶喜が初めて戸定邸を訪れ、その後も何度か訪れています。1892年（明治24年）には、徳川武定が子爵を叙爵し、戸定邸は松戸徳川家の本邸となりました。

1951年（昭和26年）には、徳川武定が建物と敷地を松戸市に物納し、その後、一般公開されるようになりました。

文化財

戸定邸は、以下の文化財として指定されています。

国指定重要文化財：旧徳川家住宅松戸戸定邸（表座敷棟、中座敷棟、奥座敷棟、離座敷棟、内蔵、湯殿、台所棟、玄関棟）
国指定名勝：旧徳川昭武庭園（戸定邸庭園）
松戸市指定文化財：徳川昭武関係資料（計4039点）

アクセス

鉄道：JR東日本・新京成電鉄 松戸駅東口下車徒歩約11分
バス：松戸駅東口から松戸新京成バス「戸定歴史館」下車、徒歩約4分
自動車：東京外環自動車道 松戸インターチェンジ、三郷南インターチェンジより約10分



戸定邸は、歴史と文化に触れることができる貴重な場所です。ぜひ一度訪れて、その魅力を体感してみてください。

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