戸川昌子

戸川昌子: 推理作家とシャンソン歌手の多彩な人生

戸川昌子（とがわ まさこ）は、1931年3月23日に東京で生まれ、2016年4月26日に85歳で亡くなった日本の著名な推理作家であり、シャンソン歌手でもありました。彼女の経歴は波乱万丈であり、多くの分野でその才能を発揮しました。

若き日の戸川昌子

戸川は東京市で生まれ、東京都立千歳丘高等学校を中退後、伊藤忠商事で英語タイピストとして働き始めますが、戦後の厳しい時代背景の中、家族を亡くしたことが彼女の人生に大きな影響を与えました。戸川は母親と共に女性専用のアパートに住み、音楽に夢中になることで心の支えを見つけます。1957年頃からは、銀巴里という場所でシャンソン歌手として活動を開始します。この活動は彼女の人生を大きく変えるものであり、美輪明宏との出会いをきっかけにレギュラーとして参加することになります。

作家としての成功

1962年、戸川は自らの住まいである大塚女子アパートを舞台にした推理小説『大いなる幻影』で第8回江戸川乱歩賞を受賞します。この受賞は彼女の作家としての地位を確立するものでした。続く1963年には、『猟人日記』を発表し、こちらもベストセラーとなります。この作品は一人の男性による連続殺人事件を取り上げており、その大胆なテーマが注目を集めました。この成書が映画化された際、戸川自身も女優として出演しました。

その後、彼女は約100タイトルの作品を発表し、世界中で翻訳されるなど、国際的な評価を得ます。作品には『深い失速』や『闇の中から』などがあり、ジャンルを超えた幅広いテーマが特徴です。また、テレビドラマやタレント業としても活動し、独自の発言スタイルで「女傑」とも称されました。

音楽活動と家族

音楽の面でも、戸川は1975年にシングル『失くした愛』をリリースし、その後もさまざまなアルバムを発表します。特に1977年には46歳で高齢出産を経験し、そのことがメディアを通じて大きな話題となります。

不運な出来事もありましたが、戸川は新たな挑戦を続け、2001年には参議院議員選挙に出馬するなど、政治への関心も示しました。音楽面でも、2013年には長男との共演アルバムを発表するなど、様々な活動を展開しました。

文化人としての活動と晩年

1965年には、姉が開いた喫茶店を受け継ぎ、渋谷に移転した「青い部屋」を営むことになります。ここでは多くの文化人や著名人が集まり、33年間にわたり、シャンソンとともに文化交流の場として機能しましたが、2000年12月にリニューアルオープンした後、2010年に閉店しました。

2014年には、自宅が長年ゴミ屋敷となっていたことがテレビ番組の取材を通じて明らかになり、整理作業が行われるなど、晩年にはさまざまな問題が浮上しました。2016年4月26日、彼女は胃がんのために亡くなりましたが、その影響力と業績は今でも多くの人々に記憶されています。

戸川昌子は、推理小説界の先駆者としても、シャンソン歌手としても、人々の心に残る存在でした。彼女の作品は、今もなお新しい読者に魅力を与え続けています。

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