戸田正三

戸田正三（とだ しょうぞう）は、1885年4月9日に生まれ、1961年11月20日に没した、日本の衛生学者です。京都大学の名誉教授であり、金沢大学の初代学長を務めました。彼は、実用的な衛生学の確立を目指し、日本の生活環境の改善に大きく貢献しました。

生い立ちと学歴

戸田正三は、兵庫県朝来郡中川村で生まれました。旧制兵庫県立豊岡中学校、旧制第七高等学校造士館を経て、1910年に京都帝国大学医科大学を卒業しました。その後、1912年から4年間、欧米各国（ドイツ、イギリス、フランス、アメリカ）に留学し、先進的な衛生学を学びました。

研究と業績

1916年、戸田は京都帝国大学の教授（衛生学担当）に就任しました。彼は、日本の風土や生活様式に合った衛生学を確立することを目指し、食生活、服装、住宅、上下水道など、多岐にわたる分野で研究を行いました。特に、日本の気候に適した開襟シャツである「戸田式開襟シャツ」の発明は、広く知られています。

1923年には、雑誌『国民衛生』を創刊し、衛生思想の普及に努めました。関東大震災後の1925年には、東京市保健局長を兼務し、復興に尽力しました。1932年には、京都帝国大学医学部長に就任し、大阪高等医学専門学校の校長も兼任しました。1939年には、京都帝国大学興亜民族生活科学研究所の初代所長に就任し、民族の生活様式に関する研究にも取り組みました。

戦後

1945年に定年退職し、京都大学名誉教授となりました。同年、日本医療団総裁に就任しましたが、戦後、公職追放となり、一時的に活動を制限されました。しかし、1949年には、金沢大学の初代学長に就任し、その後4期にわたり学長を務め、大学の発展に貢献しました。1951年には、日本学士院会員に選出されました。

731部隊との関係

戸田正三は、731部隊との関係も指摘されています。京都大学が保管する文書には、戸田が731部隊から多額の研究資金を受け取っていたことが記載されています。また、同大学の卒業生であった石井四郎軍医とも親交があり、戸田は多くの大学関係者を731部隊に軍属として出向させていたとされています。戸田自身が細菌研究や人体実験に関与したかどうかは不明ですが、満州や中国（支那）へ渡航し、部隊関係者と接触していたことは事実です。

その他

戸田は、建築家である藤井厚二に自宅の設計を依頼するなど、幅広い分野に関心を持っていました。

戸田正三は、日本の衛生学の発展に大きく貢献した人物であり、その業績は今日でも高く評価されています。実用的な衛生学の確立を目指した彼の功績は、現代の私たちの生活にも大きな影響を与えています。

もう一度検索