戸田氏良

戸田氏良：大垣新田藩から野村藩へ至る生涯

戸田氏良は、美濃国大垣藩をルーツとする武士です。天保10年(1839年)、大垣藩主・戸田氏正の次男として誕生しました。氏良の生涯は、家督相続、戊辰戦争への参加、藩の変遷、そして歌人としての活動と、多様な側面を有しています。

氏良は、大垣新田藩（三河畑村藩）の第7代藩主・戸田氏綏の養子となりました。安政2年(1855年)、養父・氏綏の死去に伴い、家督を相続し、大垣新田藩の第8代藩主となります。同年、将軍徳川家定に拝謁し、従五位下、淡路守に叙任されています。

慶応4年(1868年)、尊皇攘夷の動きが激化する中、氏良は上洛し、新政府への恭順の姿勢を示しました。戊辰戦争では、新政府軍として北越戦争に出陣、戦功を挙げ、明治2年(1869年)、政府から2000両の褒賞を受けています。

しかし、氏良の藩主としての道は平坦ではありませんでした。大垣新田藩は、特定の領地を持たない特殊な「新田藩」であり、藩政は本家である大垣藩に委託されていました。そのため、実質的な支配権は弱く、明治2年の版籍奉還において、氏良は藩知事に任命されませんでした。

この状況を打破するため、大垣藩主・戸田氏共は、蔵米3000石に相当する美濃国内の領地を分割し、氏良に与えました。これに伴い、大垣新田藩は、三河国渥美郡畑ヶ村から美濃国大野郡野村に移転し、野村藩と改称されました。氏良は、陣屋移転、藩士の移住など、新しい城下町の整備に尽力しました。

これらの努力が実り、明治2年10月23日、氏良はついに野村藩知事に任命されます。しかし、明治4年(1871年)の廃藩置県により、その職を解かれました。その後、東京に移住し、明治17年(1884年)には子爵に叙爵されています。明治25年(1892年)、54歳で生涯を終えました。

氏良は武人としての側面だけでなく、優れた歌人としても知られていました。「明治勅題歌集」や「増補勅題歌集」に多数の作品が収録されており、その才能は高く評価されています。

氏良の生涯は、激動の時代を生き抜いた武士の物語です。藩主としての苦悩、戊辰戦争での武功、そして歌人としての才能。これらの要素が複雑に絡み合い、氏良という人物像をより立体的に浮かび上がらせています。彼の功績は、単なる藩主としての活動にとどまらず、時代の変遷の中で柔軟に対応し、新たな道を切り開こうとした、その意志の強さにあると言えるでしょう。

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