戸田派武甲流薙刀術

戸田派武甲流薙刀術について

戸田派武甲流薙刀術は、伝統的な薙刀術の流派の一つで、日本の武道文化において独特な地位を占めています。特に、鍵付薙刀を用いる技術が特徴で、その技法の多様性は他の流派と一線を画しています。一般的に薙刀術の多くは、薙刀対日本刀というシナリオを中心に据えていますが、戸田派武甲流は剣、槍、鎖鎌に対する技法も重要視し、全体での形の本数が特に多いのが特徴です。具体的には、薙刀同士の戦いに特化した形が11本、対剣、対槍、対鎖鎌がそれぞれ5本存在し、計30本の技法を学ぶことができます。このような多様な技法は、全日本なぎなた連盟が形を決める際の参考にもなったとされています。

歴史

この流派の起源は、越前の朝倉家に仕えた武士、戸田清眼に遡ります。彼は富田勢源とも関連される人物で、関東地方の北条氏邦という戦国武将夫妻がその技を学んだとされています。時を経て、流派は北条家の家臣だった武州秩父地域の強矢家に受け継がれ、彼らの家伝の技として広まります。特に幕末には第十三代目の伝承者、強矢良輔が著名で、彼は甲源一刀流の剣客としても知られ、紀州藩の剣術指南を任されるなど、武道界において重要な人物です。強矢はこの流派を「戸田派武甲流」として改称しました。

技法

戸田派武甲流の技法は多岐にわたり、ここではその代表的な技をご紹介します。

• - 相薙刀（薙刀合薙刀）: 十一本の技法

- 飛乱
- 虎乱
- 合位
- 風葉
- 水車
- 小手落之事
- 引落
- 迅雲
- 左右打留
- 突留
- 片手返

• - 太刀（薙刀合太刀）: 五本
• - 槍（薙刀合槍）: 五本
• - 鎖鎌（薙刀合鎖鎌）: 五本
• - 鍵付薙刀合太刀、槍: 各五本ずつ

それぞれの技には表の形と裏の形が存在し、その技術の奥深さを物語っています。

系譜

この流派の系譜は次のように続いています。

• - 流祖: 戸田清眼
• - 二代: 北条氏邦
• - 三代: 大福御前
• - 四代: 強矢維行
• - 五代目以降: 強矢家が続き、最終的には第20代宗家に引き継がれるまで、12代にわたって強矢家が中心となっています。

宗家代理と継承問題

20代宗家は生前、兄弟子であるデンマーク出身の師範を宗家代理に指名し、彼に後事を託しました。しかし、その一方で、門弟の中には宗家代理に無断で自称二十一代宗家を名乗る者が現れ、流派内での権限を巡る争いが生じています。このような背景もあり、戸田派武甲流はこれからの流派の発展において新たな課題を抱えています。

関連文献

この流派への興味を深めるためには、以下の文献も参考になるでしょう。

• - 秘伝古流武術 編集『秘伝古流武術 第2号』
• - 新田寿々雄『日本伝承武芸流派読本』

戸田派武甲流薙刀術は、伝統と現代の融合が試みられる時代において、今後も注目を集める流派といえます。

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