宗家

宗家：一族、一門の中核とその歴史

宗家とは、一族や一門において中心となる家系、あるいはその当主を指します。本家とも呼ばれ、伝統芸能や武術などの流派においては、家元を指すこともあります。

宗家の起源と継承

古代日本では、家父長制や長子相続が一般的であり、長男が宗家を継承する嫡流が基本でした。しかし、末子相続の事例もあったという説や、長男が廃嫡されたり、養子に出されたり、出家したりした場合には、弟が宗家を継承することもありました。

朝鮮においては、宗家は門中の象徴的な中心として、共有財産の管理や祖先の祭祀などを担っていました。宗家(チョンガ)はその家系の後継ぎ、宗孫(チョンソン)はその当主を指しました。

「宗」という漢字は、祖先霊に対する信仰を表し、転じて「ものの始まり」や中心を表す意味を持つようになりました。そのため、宗家は血筋によって定まる氏族の中核をなす家系を指す言葉として用いられてきました。

宗家と嫡流、養子制度

古代より、上位の権力による支配構造が存在し、血統だけでなく氏長者による統制も秩序維持に重要な役割を果たしていました。宗家の断絶は一族の存亡、さらには支配体制の危機に繋がるため、嫡流継承が重視されました。

養子制度は、宗家継承を維持するための重要な制度でした。孫や甥、非嫡出子、あるいは血縁のない者が養子となり、宗家を継承することもありました。正室の子が側室の子よりも優先されることもありました。

嫡流であっても宗家の地位を失うこともあり、その血筋を嫡家と呼び、庶流が宗家を名乗る場合もありました。時代が下るにつれて、宗家の定義はますます複雑になり、宗家をめぐる争いは歴史上数多く発生しています。江戸時代の御三家や御三卿は、徳川宗家の後継が絶えた場合の権威維持のための制度でした。

氏長者との関係

氏長者とは、氏族全体の代表者を指します。例えば、源氏長者は源氏一族全体の代表者であり、足利氏や徳川氏など、下位の一族集団（それぞれの宗家が存在）を包含していました。足利将軍家や徳川将軍家は、それぞれの宗家であると同時に源氏長者でもありました。

北条[[氏]]の「得宗家」

鎌倉幕府における北条[[氏]]の惣領家系を「得宗家」と呼びましたが、史料に「得宗」と記された例は少なく、行政用語だった可能性もあります。その語源には諸説あります。

能楽における宗家

能楽では、家元を宗家と呼びます。観世流では、当初、観世銕之丞家に対して家元家を宗家と呼び始めました。宗家の名称は江戸幕府将軍から与えられたとする説もあります。現在では、観世流以外の流派でも宗家の呼称が使われています。原則として世襲制ですが、実子がいない場合は養子を迎えます。

観世流など、シテ方（主人公）の流派の宗家は強い権限を持ち、演目、演出、上演、人事、免状、謡本刊行などの権限を有します。能楽師の育成は流派によって、宗家自身が行う場合と、一定の家格を持つ家に委ねる場合があります。

明治維新後、観世宗家の東京への帰還を巡り、観世銕之丞家と梅若家との間で、免状発行権を巡る対立（観梅問題）が起こりました。最終的には、能楽協会の仲介により、梅若流は観世流に復帰しました。

武術における宗家

日本の武術流派でも、家元を宗家と呼びます。明治以前は師範や指南役と呼ばれていましたが、明治以降、宗家という呼称が一般化しました。例外的に、明治以前から宗家制度を敷いていた流派もあります。

武術流派における家元制度は、弓馬術の小笠原流などに起源を持ちます。弓馬術は儀礼的側面が強かったため、実力勝負の世界である他の武術と異なり、家元としての権威を比較的維持しやすかったと考えられます。

江戸時代には、特定の家柄が世襲的に師範を継承する家元のような存在はありましたが、全国の門弟を統制するような家元は一般的ではありませんでした。これは、幕藩体制下における藩の独立性、武術の秘密性の高さなどが要因です。弟子は師匠から免許を得て、独自に門弟を指導し、免許を発行する権利を持つのが一般的でした。

明治以降、多くの武術流派が消滅の危機に瀕し、生き残った流派は宗家制を導入して組織の全国化を図りました。しかし、宗家制導入に伴う問題も多く発生しています。

免許皆伝と指南免許

免許皆伝と指南免許を区別する流派もありました。指南免許は、弟子を教授する資格であり、その位置付けは流派によって異なりました。

歌舞伎における宗家

歌舞伎では、市川團十郎を市川宗家と呼びます。

その他

陰陽道宗家は、朝廷陰陽寮に属する陰陽師のうち、賀茂氏と安倍氏を指します。

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