戸部 (六部)

戸部（こぶ、満洲語：boigon i jurgan）は、中国の官制における六部の一つであり、土地管理、戸籍管理、官吏への俸給支給など、国家の根幹を支える財務関連の行政を幅広く司掌しました。その歴史は古く、三国時代の魏に置かれた度支尚書がその原型とされています。

隋代に入ると、度支尚書は民部と改称されました。さらに唐代には、太宗李世民の諱である「世民」の「民」の字を避けるために、戸部と改められました。戸部の長官は尚書（戸部尚書）と呼ばれ、次官は侍郎（戸部侍郎）と称されました。隋唐時代には、戸（民）部、度支、金部、倉部の4つの司が戸部に属し、それぞれの司には判官である郎中と員外郎が置かれていました。

しかし、安史の乱以降、唐王朝は深刻な財政難に陥ります。その結果、戸部尚書の管轄下にある戸部司と、新たに設けられた使職である度支使・塩鉄使が財政を実質的に司るようになり（三司）、戸部は次第に有名無実化していきました。財政運営の実権は、戸部から三司へと移行していったのです。

その後、北宋の時代に入り、王安石による元豊の改革が行われると、戸部は再び実権を取り戻し、再び財政を司る重要な役割を担うようになりました。この改革によって、戸部は国家財政における中心的な地位を回復したのです。

清朝末期の光緒32年（1906年）には、立憲政治への移行を目指す動きの中で、戸部は度支部（bodome bure jurgan）と改称されました。そして、宣統3年（1911年）の内閣官制実施によって、戸部は完全に廃止され、その歴史に幕を閉じました。

戸部は、中国の官僚制度において、長きにわたり国家の財政を支える重要な役割を果たしてきました。その変遷は、中国の歴史、政治、経済の動向と深く関わっており、戸部の歴史を紐解くことは、中国史を理解する上で欠かせない要素と言えるでしょう。

関連項目:
六部
度支部
尚書
侍郎
* 三司

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