手投火焔瓶

手投火焔瓶の概要

手投火焰瓶（てなげかえんびん）は、大日本帝国陸軍によって1943年7月19日に正式に採用された火焰瓶です。この兵器は主に対戦車や特火点の攻撃に使用されました。手投火焰瓶は、直径69mm、全高140mmのガラス製の瓶に常働信管を取り付けたもので、重量は540gです。内部には「カ剤」という燃料が充填され、付属品としてブリキ製のじょうごがついていました。

制式制定の背景

手投火焰瓶が制定される前、日本軍はサイダー瓶などの既製品を使って急造の火焺瓶を製造していました。公式の手投火焰瓶は、既存の瓶に信管を装着する形で急造可能な仕様も考慮されています。1942年4月からは、陸軍技術研究会において近接戦闘器材としての火焺瓶の研究が進められました。最初の試作品は、瓶内部に燃料と発火剤を封入したものでしたが、この形式は取り扱いが難しくすぐに中止となりました。

その後、缶詰に似た形式やサイダー瓶への設計変更が行われ、最終的にサイダー瓶が基になった形が採用されました。この戦闘器材は、陸軍歩兵学校と工兵学校での試験を経て実用に適するとの評価を得ました。

ノモンハン事件と火焰瓶の利用

1940年に発生したノモンハン事件において、手投火焰瓶は初めて大規模に対戦車戦闘に投入されました。当時、戦車に対する有効な攻撃方法として火焺瓶の重要性が認識され、急造の火焺瓶が多く使われました。日本軍は、サイダー瓶にガソリンを詰めた火焺瓶を製造し、即席での点火方法についても試行錯誤が続きました。ノモンハン事件中には、日本軍の兵士がガソリン缶を投げつけるシーンも目撃されました。

日本軍の戦訓

ノモンハン事件後、日本軍は火焺瓶を用いた戦闘の戦訓をまとめ、対戦車戦闘の手法を見直しました。敵戦車に近接することが難しい状況において、伏せ込みや地形を利用した肉薄攻撃の重要性が強調されました。また、火焺瓶による直接攻撃は効果が薄く、条件によってはディーゼルエンジンを搭載した戦車には効果を発揮しないことが指摘されたのです。

ソ連軍の対策と戦車の損失

ソ連軍もノモンハン事件の教訓から、戦車の運用方法を改め、歩兵と戦車の連携強化を図りました。戦車を前線から遠ざけ、砲兵を先行させて敵の防御を打破する新たな戦闘理念を取り入れることで、火焺瓶による被害を抑えることができました。日本軍の火焺瓶攻撃によって、ソ連側の戦車や装甲車は397輌が喪失したとされ、そのうち火焺瓶によるものは5%から10%と推測されています。

事件後の影響と評価

ノモンハン事件を経て、手投火焺瓶は限定的ながらも対戦車戦闘の一助となりました。しかし、より効果的な兵器の開発が求められるようになり、火焺瓶が常用されるような事態には至りませんでした。その後も、一時的に火焺瓶の調達が計画されましたが、引き続きより効果的な対戦車兵器の研究と開発が進められることになりました。

このように手投火焺瓶は、対戦車戦闘における戦術の一つとして歴史に刻まれていますが、戦局の変化に応じてその役割は変化しました。

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