扱箸

扱箸について

扱箸（こきばし、こいばし、こきはし）は、江戸時代における稲の脱穀に使われた伝統的な農具です。一般的な形状は竹製の箸に似ていますが、その機能は食事用とは異なり、手作業で籾を一粒一粒取り出すことができるよう工夫されています。扱箸の長さは食用の箸が約18cm程度であるのに対し、扱箸は30cmから60cmのサイズがあり、使い勝手の良さが伺えます。

使用方法

扱箸の基本的な操作法としては、片側を地面に刺し、もう一方で稲穂の穂首を挟み、しごくように引き抜くことで脱穀作業を行います。この方法により、稲から籾を効率良く取り出すことができました。『会津農書』では、扱箸は「竹こき」としても知られています。

扱箸を用いた場合、男性は1日当たり12束、女性は9束分の籾を脱穀することができたとされています。このように、扱箸は労働力に合わせた使い方が可能であったため、農業における貴重な道具となったのです。

その他の用途

扱箸は、稲の脱穀だけでなく、豆類や麦の脱穀にも使用されていました。このように、扱箸は多方面での農作業に貢献していたことがわかります。また、長さ約6cmの小型のものもあり、藁を使った折り合わせ技術を駆使して掌の上に載せることができました。この場合、親指と人差し指、または中指で固定し、稲穂を挟んで引き落とす技術が用いられました。

小型の扱箸も主に篠竹で作られていましたが、いくつかは鉄製の材料で製造されたこともあったようです。このように、扱箸は様々な材質や形状で存在していたことが分かります。

扱箸の歴史的な変遷

元禄年間になると、より効率的に脱穀作業を行える千歯扱きが登場し、扱箸は徐々にその役割を失っていきました。しかし、それでも扱箸は明治初期まで使用されており、その存在は江戸時代の農業における重要な一面を示しています。

扱箸は、シンプルながらも効果的な設計で、数世代にわたって農作業を支えてきました。今日では、その存在が農業の歴史や伝統文化における価値を教えてくれます。扱箸の使用法や意義を知ることで、私たちはその時代の労働者たちの知恵や努力を感じることができるのです。

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