千歯扱き

千歯扱きとは

千歯扱き、またはその異称である千把扱きや千刃は、日本における古い脱穀用の農具です。この道具は、木製の台から鉄や竹製の櫛状の歯が突き出している形状をしており、稲や麦の収穫後に穂を脱穀するために用います。具体的には、稲用と麦用に分かれているため、それぞれの作物に最適な使用がなされます。

歴史的背景

千歯扱きは、元禄時代の1688年から1704年にかけて、現在の大阪府高石市にあたる地域で宇兵衛によって考案されました。初期のモデルは竹製の穂を用いた麦専用のもので、その後『和漢三才図会』にて稲用の竹穂が記載され、さらに鉄製のものが登場しました。ただし、別の文献『和泉志』では初めから鉄製の穂が用いられていたと述べられています。稲用の木製穂は姿を消しましたが、麦用は関東地方、多摩丘陵や武蔵野台地で使われ続けました。明治時代には神奈川県で13000挺の千歯扱きが生産された記録も残っています。

使用方法

千歯扱きは、木製の台に取り付けられた足置きを踏むことで体重で固定し、櫛状の歯に刈り取った稲や麦の束を下方向に叩きつけます。稲の場合、穂から籾が落ち、脱穀が完了します。一方、麦は穂の首を折りながら落とすので、さらに叩いて脱穀を行います。この道具が発明されたことにより、従来の労働集約型の脱穀方法に比べて作業の効率は飛躍的に向上しましたが、従来の方法で生計を立てていた人々にとっては収入源の脅威ともなったため、難しい面もあったのです。

進化と衰退

大正時代には、足踏み式の回転ドラムに基づく脱穀機が開発され、さらに脱穀効率が向上しました。これにより千歯扱きは急速にその役割を失い、昭和初期には製造が終わりに近づいていきました。しかし、種籾を痛めることなく脱穀できる特徴から、昭和中期まで利用され続けました。

構造と製造技術

千歯扱きにおける櫛状の歯は「穂」と呼ばれ、1台あたり17から27本が使われます。江戸時代初期の穂は長方形であったものが、明治に入ると様々な形に改良されています。製造には熟練した技術が必要で、行商活動も行われました。

主要な産地と行商

千歯扱きの重要な産地として知られるのは、鳥取県倉吉市と福井県の早瀬です。倉吉では江戸時代から多くの鍛冶屋が存在し、製造から販売まで一貫して行えていました。早瀬も同様に盛んで、製造した千歯扱きが全国へ行商されました。特に行商では、商品を掛け売りし、稲刈り時期の収入を基に残金を精算する方法が一般的でした。

結論

千歯扱きは、単なる農具以上のものであり、農業の進展や地域の産業構造にも大きな影響を与えてきました。特に地域を支え、継承されていった技術や文化は、現代でも重要な資源として見直されています。

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