折尾町

折尾町（おりおまち）

福岡県遠賀郡にかつて存在した町であり、現在は北九州市八幡西区の一部を構成しています。特に、1963年（昭和38年）の北九州市発足以前に八幡市に編入された旧市域に含まれます。地理的には、遠賀川下流域の東側に位置し、古くから交通の要衝として栄えた地域です。

この地域の市街地形成は、江戸時代に大きく進展しました。筑前藩によって農産物や石炭などを運搬するために開削された堀川運河は、遠賀川と洞海湾を結び、水上交通の動脈としての役割を果たしました。この運河沿いに集落や商業地が生まれ、現在の折尾地区の礎が築かれました。

近代に入ると、陸上交通の発展が折尾の重要性を一層高めました。特に鉄道は、この地域の発展に不可欠な要素でした。地域における鉄道交通の重要な結節点である折尾駅は、1891年（明治24年）2月28日に開業しました。ここでは、主要幹線である鹿児島本線と、筑豊地方の石炭輸送などを担った筑豊本線が交差しており、人の流れと物流の拠点として機能しました。大正時代にあたる1916年（大正5年）11月5日には、木造平屋建ての風格ある折尾駅旧駅舎が完成し、長年にわたり地域のシンボルとして親しまれました。

自治体としての歴史は、近代地方自治制度の発足とともに始まります。1889年（明治22年）4月1日、町村制施行に伴い、折尾村、陣原村、則松村、永犬丸村、本城村の五ヶ村が合併し、遠賀郡に洞南村（くきなみむら）が誕生しました。その後、1904年（明治37年）7月1日には村名を折尾村と改称。地域の発展に伴い、1918年（大正7年）12月15日には町制を施行し、折尾町として新たな体制を整えました。折尾町は、その後の約26年間、遠賀郡の独立した自治体として存続しました。しかし、第二次世界大戦中の戦時体制強化の流れの中で、1944年（昭和19年）12月8日、折尾町は近隣の八幡市に編入されることとなり、自治体としての歴史に幕を閉じました。

現代における旧折尾町域は、北九州市の南西部に位置し、郊外の主要な住宅地として発展しています。JR折尾駅を中心とした交通の利便性の高さは変わらず、市内外へのアクセス拠点となっています。また、この地域は教育機関の集積地としても知られており、複数の大学、短期大学、高等学校、各種専門学校などが立地しています。そのため、「学園都市」としての性格が強く、多くの学生が集まる活気のある地域となっています。かつて交通の要衝として栄えた歴史を持つ折尾地区は、時代を経て姿を変えながらも、北九州市八幡西区の重要な一角を担っています。

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