抜海駅

抜海駅：日本最北の無人駅と、その存廃問題

北海道稚内市のクトネベツ地区に位置する抜海駅は、JR北海道宗谷本線沿線にある無人駅です。木造駅舎を持つ駅として日本最北端に位置し、その歴史と現状、そして将来にわたる存廃問題について見ていきましょう。

歴史

抜海駅は1924年（大正13年）、天塩北線の稚内～兜沼駅間開通に伴い開業しました。当初は一般駅として営業していましたが、1977年（昭和52年）に貨物取扱いを、1984年（昭和59年）に荷物取扱いを廃止。その後、1986年（昭和61年）には完全無人化となりました。

近年では、2019年（令和元年）、JR北海道から沿線自治体に対し、抜海駅を含む29駅の存廃に関する協議が求められました。これを受け、地元の稚内市と住民との間で、駅の存続または廃止に関する協議が開始されました。当初は2021年3月のダイヤ改正での廃止が予定されていましたが、住民からの強い要望や協議の継続を経て、2021年度からは稚内市による維持管理に移行されました。

しかし、利用者数の減少を理由に、稚内市は2022年度で市費による駅舎の維持を終了する意向を示しました。その後、住民の反対や観光への影響などを考慮し、2023年度中は維持を決定。代替交通手段の検討や地元との協議を行いながら、2024年度末での廃止が決定しました。

駅構造と周辺環境

抜海駅は地上駅で、かつては相対式ホーム2面2線を有する列車交換可能な駅でしたが、2024年9月からは1面1線の単式ホームとなりました。駅舎は開業当時の木造駅舎を改修して使用されており、稚内市が管理する無人駅となっています。ホームには地元住民が手入れする花が植えられており、温かい雰囲気を感じられます。

駅周辺は、海岸沿いの抜海市街地から離れた丘陵地帯に位置し、人家はまばらで、商店などは存在しません。北海道道510号や北海道道106号（日本海オロロンライン）が近くを通っており、周辺には牧草地が広がっています。抜海市街地へは、車で約2kmの距離にあります。観光資源としては、抜海岩、抜海原生花園、稚内西海岸原生花園、抜海岬などが挙げられ、駅周辺は自然豊かな環境にあります。

存廃問題と今後の課題

抜海駅の存廃問題は、少子高齢化による利用者数の減少、維持管理費用の負担、代替交通手段の確保など、地方のローカル線を取り巻く課題を象徴的に示しています。稚内市は、代替交通手段として乗り合いタクシーの実証実験を実施するなど、地元住民との協議を重ねながら対応策を探っています。しかし、住民感情や観光への影響、費用対効果などを総合的に判断する必要があり、簡単な解決策を見出すのは難しい状況です。

抜海駅の存廃問題は、単なる駅の存続の是非を超えて、地域の活性化、交通インフラの維持、そして地域住民の生活の質を問う複雑な問題となっています。今後の展開に注目が集まっています。

その他

抜海駅は、その独特の雰囲気から、『南極物語』（1983年）、『少女に何が起ったか』（1985年）、『北の桜守』（2018年）など、数多くの映像作品にも撮影場所として利用されています。

アクセス

JR宗谷本線 抜海駅

参考文献

JR北海道ホームページ
* 関係各紙報道記事

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