宗谷本線

宗谷本線：日本最北端を結ぶ鉄道の軌跡と未来

宗谷本線は、北海道の旭川駅から稚内駅までを結ぶ、北海道旅客鉄道（JR北海道）が運営する鉄道路線です。全長259.4kmを誇り、地方交通線としては日本最長を記録しています。旭川市を出発し、上川管内北部、宗谷管内を縦断、日本最北端の稚内市に至るルートは、国道40号とほぼ全区間で並行しています。士別市から幌延町にかけては、天塩川の右岸に沿って線路が敷設されています。

樺太連絡から地域輸送路線へ

宗谷本線の歴史は古く、1898年（明治31年）の旭川駅 - 永山駅間の開業に始まります。当初は、日本領土であった樺太（南樺太）への連絡鉄道として建設が進められ、稚内駅からは対岸の大泊（コルサコフ）への連絡船（稚泊航路）が運行されていました。1945年（昭和20年）の終戦まで、この航路は重要な役割を果たしました。

沿線地域では、木材や石炭、水産物などが産出されており、宗谷本線はそれらの輸送を担う重要な貨物路線としての役割も担っていました。天塩川の舟運に取って代わる形で、道北各地の経済発展に大きく貢献しました。第二次世界大戦末期、全国的に列車本数の削減が相次いでも、宗谷本線では最後まで急行列車が運行され続けていたことは、その重要性を示す一例です。

ソ連対日参戦による南樺太占領後、樺太連絡の使命を失った宗谷本線は、合理化のため1955年（昭和30年）から普通列車の気動車化が進められました。優等列車は1958年（昭和33年）に復活し、その後も継続して運転されています。2000年（平成12年）には旭川駅 - 名寄駅間の高速化改良工事が完了し、定期特急列車の運転が開始されました。一方、接続していた支線は1995年（平成7年）までに全て廃線となりました。

野生動物との共存：新たな課題

近年、宗谷本線沿線ではヒグマやエゾシカの出没が頻発しており、線路内への侵入による列車の遅延や運休が増加傾向にあります。特にシカとの衝突件数は増加の一途を辿っており、深刻な問題となっています。

建設時の政治的背景

宗谷本線の建設ルート選定には、政治的な駆け引きも絡んでいました。当初は幌延経由のルートが予定されていましたが、憲政会と政友会の争いの中で、浜頓別経由ルートに変更されました。これは、浜頓別経由沿線に有力政治家が土地を所有していたことが影響したと考えられています。最終的には、幌延経由ルートも全線開業しました。

そして現在…存廃問題

厳しい経営状況に悩むJR北海道は、2016年、宗谷本線の一部区間について「自社単独では維持することが困難な路線」と発表しました。特に名寄駅 - 稚内駅間は、老朽化対策や車両更新に多額の費用が必要とされ、存廃問題が大きな議論を呼んでいます。沿線自治体では、利用促進策や維持管理のあり方についてJR北海道と協議を進めており、地域と鉄道の未来をかけた取り組みが続けられています。

運行形態と利用状況

宗谷本線は、特急列車と普通列車が運行されています。特急列車は札幌駅 - 稚内駅間を直通する「宗谷」と、旭川駅 - 稚内駅間を運行する「サロベツ」があります。普通列車は、名寄駅を境に南北に運転系統が分かれており、旭川駅 - 名寄駅間では快速列車も運行されています。多くの普通列車はワンマン運転です。

貨物輸送は、旭川駅 - 北[[旭川駅]]間で、函館本線や室蘭本線と直通する高速貨物列車や専用貨物列車が運行されています。

また、冬季には日本で唯一の定期排雪列車が運行されています。

多くの駅が廃止、将来への展望

利用客の減少を背景に、多くの駅が廃止されました。それでも、地域住民の生活や観光を支える重要な役割を担う宗谷本線は、その存続に向けて、関係者による様々な取り組みが続けられています。宗谷海峡海底トンネル計画など、未来に向けた構想もありますが、実現には様々な課題を克服する必要があります。宗谷本線は、日本の最北端を繋ぐ貴重な鉄道として、その未来に注目が集まっています。

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