抱え投げ (相撲)

抱え投げ（かかえなげ）および抱き投げ（だきなげ）は、かつて大相撲においてマスコミによって報道・記録されていた決まり手の一つです。しかし、現行の公式決まり手82手の体系には含まれていません。

この技は、後ろから相手を抱きかかえるようにして投げる技とされています。現在の公式決まり手で言えば、送り投げ、もしくは送り吊り落としに相当するものと考えられます。相手の体を持ち上げて投げる豪快な技であり、見た目にもインパクトのあるものでしょう。

公式な決まり手が制定される以前には、以下の取組が「抱え投げ」もしくは「抱き投げ」として記録されています。

昭和14年1月場所3日目　○羽黒山－龍王山×
この取組で勝負が決まった際、決まり手をどう判断するか実況アナウンサーが困惑し、一時的に放送を中断する事態となりました。至急調査を行った結果、「抱き投げ」という決まり手で記録されることになったというエピソードが残っています。当時の相撲界においては、まだ明確な決まり手の定義が確立されていなかったことがうかがえます。
昭和26年9月場所13日目　○琴錦－輝昇×
* 昭和27年5月場所中日　○若葉山－松登×

これらの記録から、抱え投げ（抱き投げ）は、昭和初期から昭和20年代にかけて比較的見られた技であったことが推測できます。現在では公式な決まり手として認められていませんが、相撲の歴史においては、確かに存在した技として記録されています。

現在、同様の体勢から投げる技は、送り投げや送り吊り落としとして分類されます。これらの技は、相手の体を抱え込むようにして、土俵の外に送り出す、もしくは吊り落とすという点で、抱え投げの概念を引き継いでいると言えるでしょう。

相撲の決まり手は、時代の変遷とともに変化してきました。抱え投げのように、かつては存在したものの、公式な体系からは姿を消した決まり手も存在します。しかし、これらの技もまた、相撲の歴史を彩る重要な要素の一つであり、その名残は、現在の決まり手の中に見出すことができます。

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