抵抗権

抵抗権について

抵抗権（ていこうけん）は、人民が信任する政府がその権力を不適切に行使した場合に、人民が抵抗する権利を指します。この権利は反抗権や革命権としても知られ、政治的な嵐や権力者の圧制に対抗するために生まれた重要な概念です。

概要

歴史上、君主や政府が人民の信頼を失い、転覆されることは普遍的な現象です。このような状況を避けるために、抵抗権や革命権の理論は、さまざまな地域で独自に形成されてきました。この権利は古代ギリシアの暴君暗殺論から、中世のモナルコマキ、近代のジョン・ロックによる革命権理論に至るまで、さまざまな形で表現されてきました。

抵抗権の厳密な定義は一様ではありません。合法的な抵抗とみなされる行動が抵抗権に含まれ、暴力を伴う行動が革命権として区別されることもあります。また日本国憲法には明文では抵抗権が示されていないものの、１２条の自由・権利の保持責任に基づいて、抵抗権の存在を認める見解もあります。

中世の抵抗権

中世ヨーロッパでは、国家が神の法に基づいて正当化されていました。しかし、国家権力の行使には道徳的限界が設定され、抵抗権はあくまでも消極的な政治的主張と見られていました。ゲルマン法の思想では、明示された契約に対する反抗は正当なものであり、君主が法を破った際には、臣民は契約の義務から解放され、抵抗する権利を持つとされていました。

モナルコマキ

16世紀のフランスでは、『暴君に対する自由の擁護』といった文献が、君主が神の法を破った際の抵抗権について論じました。君主は神の法を実行する義務があり、それを侵した場合、民衆は服従する必要がないとされていました。

ヘンリク条項

1573年にはポーランド・リトアニア共和国でヘンリク条項が設けられ、君主の法や特権の濫用に対し、貴族が反抗する権利が保証されました。この制度に基づく抵抗権は、合法的な反乱を支持する根拠ともなっていました。

近代の抵抗権

近代では、ジョン・ロックが抵抗権の理念を進化させました。ロックは、公共統治機関が人民の自由や財産を侵害した際には、人民が政府を打倒する権利を有すると主張しました。彼の思想は、アメリカ独立革命やフランス革命の根拠となりました。特に1776年のバージニア権利章典は、抵抗権を初めて明文化しました。

アメリカ独立宣言とフランス憲法

同年に策定されたアメリカ独立宣言では、政府が暴政に転じた場合の人民による抵抗が権利だけでなく義務としても示されました。また1793年のフランス憲法では、圧政からの抵抗権が人権と位置づけられ、反乱行為も権利及び義務であると規定されました。

第二次世界大戦後

第二次世界大戦後のドイツでは、過去のナチズムを経て抵抗権に関する明文規定が整えられました。1946年のヘッセン州憲法では、抵抗権を各人の権利と義務とする旨が記されています。さらに1949年のドイツ連邦共和国基本法では、抵抗権が明文化され、その範囲も市民や団体にまで広がる可能性が議論されています。

まとめ

抵抗権は、人民の権利を保証する重要な概念であり、歴史的背景や文脈によってその形は多様です。しかし、基本的な理念は共通しており、人民が不当な権力に対抗する正当性を持つことを示しています。

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