押尾健一

押尾 健一（おしお けんいち）氏は、1971年7月3日生まれ、千葉県出身の元プロ野球選手です。現役時代は投手として東京ヤクルトスワローズに所属し、引退後も同球団で様々な重要なポストを歴任しています。

高校時代からプロ入りまで

中学時代からすでに投手としての高い評価を得ていた押尾氏は、強豪校である東海大浦安高校からの勧誘も受けましたが、心臓に持病を持つ母親のそばにいたいという思いから、自宅近くの成東高校へ進学することを決めました。成東高校でも、高校の先輩、鈴木孝政氏に匹敵すると評されるほどの速球も持ち味でしたが、在学中には度重なる故障に見舞われました。1年夏に左足アキレス腱を断裂し3ヶ月の入院を余儀なくされ、3年春にも右ひじを痛めています。

しかし、これらの困難を乗り越え、最後の夏となった3年時の千葉県大会では、シュートやカーブを効果的に駆使し、全7試合に一人で登板。驚異的なスタミナと投球術で、71奪三振、わずか7失点という圧巻の成績を残しました。特に、決勝では知野公昭氏らを擁する強豪・拓大紅陵高校を5安打に抑え込み完封勝利を飾り、母校を初の全国高等学校野球選手権大会出場へと導きました。甲子園本大会では、初戦で智弁和歌山高校と対戦し、延長11回の熱戦の末に2対1で勝利。2回戦では福岡大大濠高校に0対4で敗退しましたが、その粘り強い投球は注目を集めました。

高校卒業後は早稲田大学への進学を視野に入れていましたが、1989年のプロ野球ドラフト会議でヤクルトスワローズから4位指名を受けたことを機に進路を変更。契約金4000万円、年俸420万円（金額はいずれも推定）という条件でプロ入りの決断を下しました。

プロ野球選手としてのキャリア

プロ入り後は、1991年にアメリカ・マイナーリーグ1Aのサリナス・スパーズへ派遣されるなど、球団からの期待も大きかった選手です。しかし、課題とされた制球難の克服に苦しみ、一軍での登板機会を得るまでに時間を要しました。プロ9年目の1998年にようやく一軍の公式戦でデビューを果たし、このシーズンは2試合に登板しました。プロ初登板は1998年5月12日、草薙球場で行われた広島東洋カープ戦。8回表にチーム5番手として救援マウンドに上がり、1回を無失点に抑えました。この登板で、8回表に笘篠賢治氏からプロ入り初の奪三振を記録しています。翌1999年には再び一軍での登板がなく、シーズン終了をもって現役生活に幕を閉じました。

現役時代の背番号は「63」（1990年～1999年）でした。

引退後の貢献

現役引退後も、押尾氏はヤクルトスワローズに貢献を続けました。2000年からは打撃投手兼スコアラーに転身。裏方としてチームを支える立場となりました。この間の背番号は「83」（2000年～2003年）、「101」（2004年～2015年）と変更されています。2014年までは打撃投手としての役割に加え、チーフスコアラーとして一軍の試合中にベンチで相手バッテリーの配球傾向などを詳細に分析する重要な任務を担いました。

特に転機となったのは、現役時代のチームメイトであった真中満氏が一軍監督に就任した2015年です。新設された「一軍戦略担当スコアラー」のポストに就任し、真中監督がミーティングで「押尾の言葉はコーチと同等に信頼できる」と選手に伝えるほど、その戦略眼と分析力は厚い信頼を得ました。押尾氏の緻密な作戦分析は、この年のチームの14年ぶりとなるセントラル・リーグ優勝に大きく貢献したと言われています。この時期の背番号は「101」でした。

翌2016年には、戦略担当スコアラーに加え、こちらも新設ポストである「一軍戦略コーチ」を兼任（背番号「81」）。さらに2017年には、戦略コーチと併せて一軍の投手コーチ補佐も務めるなど、指導者としての役割も担いました。しかし、チームが一軍でリーグ最下位に沈み、真中監督が同年限りで辞任したことに伴い、押尾氏も一度ヤクルトを退団しました。

だが、ヤクルトとの縁は途切れなかった。2019年にはスコアラーとして球団に復帰（この時の背番号は不明、情報源には記載なし）。そして2021年からは、将来のチームを担う若手を発掘するスカウトとして、新たな立場で球団の強化に尽力しています。

押尾氏は、選手としては限られた一軍登板にとどまりましたが、引退後、特にスコアラーや戦略担当としてヤクルトの優勝に貢献するなど、多岐にわたる役割で球団を支え続けている貴重な存在です。

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