拓殖大学国際教育会館

拓殖大学国際教育会館（たくしょくだいがくこくさいきょういくかいかん）は、東京都文京区大塚、拓殖大学文京キャンパスに隣接する場所に位置する歴史的な大学施設です。

この建物は、1933年に日本の近代建築史に名を残す建築家、内田祥三の設計により建てられました。構造は鉄筋コンクリート造（一部鉄骨鉄筋コンクリート造）の地上3階建てですが、特徴的なのはその外観に日本の伝統的な建築要素、特に和風の屋根表現が取り入れられている点です。これは、当時の東方文化学院理事長であった滝精一の要望に応えたものとされており、後に東京帝室博物館（現在の東京国立博物館本館）など、日本的な意匠を建築に取り入れる潮流のきっかけとなった点で、建築史上重要な意味を持っています。内田祥三の代表作の一つとして国内外で高く評価されています。

建物の歴史は、義和団事件の賠償金を基金として設立された東方文化学院の東京研究所として建設されたことに始まります。第二次世界大戦後には、外務省の研修施設もここに入居し、東京大学（東洋文化研究所）と外務省が共同で施設の管理・運営を行っていました。

しかし、時代の流れとともに利用状況は変化します。1967年には東京大学東洋文化研究所が本郷キャンパスへ移転し、さらに1995年には国の研修施設を都心から郊外へ移転させる方針に基づき、外務省研修所も神奈川県相模原市へ移転しました。これにより、旧東方文化学院の敷地と建物が民間へ払い下げられる可能性が生じました。

この事態に対し、建物の持つ歴史的および建築的価値を尊重する建築関係者と、跡地に大規模なマンションが建設されることへの懸念を持った地元住民が連携し、「旧東方文化学院の建物を生かす会」を結成。建物の保存を目指す運動が展開されました。当初、保存会は東京大学による建物の買い取りを要望しましたが、大学側の財政的な理由などからこれは実現しませんでした。最終的に、文京キャンパスからほど近い拓殖大学が保存会の活動趣旨に理解を示し、財務省は建物の保存を条件として、この敷地を拓殖大学に払い下げる決定を下しました。この経緯を経て、貴重な歴史的建造物は取り壊されることなく存続することになったのです。

現在、建物は拓殖大学の国際教育会館として利用されています。主に外国人留学生向けの教育を行う留学生別科や、大学院の言語教育研究科の拠点として活用されており、国際色豊かな教育研究活動が行われています。また、建物の歴史的価値を活かし、各種の学会や公開講座などの会場としても利用されており、限定的ではありますが一般にも公開される機会があります。

拓殖大学国際教育会館は、昭和初期の優れた近代建築としての価値に加え、戦後の複雑な利用変遷と市民による保存運動を経て今日に至った歴史を持つ、多角的な意義を持つ建物と言えるでしょう。内田祥三による独特の和風意匠は、現在も多くの人々に親しまれています。

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