拷問官

拷問官（とうもんかん）

拷問官とは、かつて存在した公的な役目を担う職務であり、刑事事件の被疑者に対し、拷問を伴う形で取調べを行うことを主な責務とした役人である。「拷問吏（ごうもんり）」とも称されることがある。

この職務は、その性質上、表舞台に出ることのない裏方の仕事であり、社会からは忌み嫌われる存在であった。また、職務の性質が非公開であったため、実際にどのような人物がその任に就いていたのかを示す公式な記録は極めて限られているのが実情である。現存する記録としては、フランス公文書館に残る公文書から、当時の拷問官の名前や俸給がわずかに読み取れる程度に過ぎない。

比較的具体的な人物像が判明している事例としては、死刑執行人の頭領であるムッシュ・ド・パリの一族、サンソン家に伝わる文献『サンソン回想録』に登場するフランソワ・プリュドムやジュール・トロンソンに限られる。彼らは、拷問官としての職務の後に、死刑執行人へと転身した事例としても知られている。

拷問制度が時代とともに廃止されるに至り、彼らは公務員としての職を失うこととなった。特にフランスにおいては、拷問官は社会的に被差別階級に属する人々が担うことが多く、そのため、失職後に新たな職に就くことが非常に困難であったと伝えられている。多くの場合、失職時に国から支給されたわずかな年金によって、かろうじて生計を立てていたとされる。

後世への影響

拷問は、特に城郭などの地下に設けられた監獄や地下室で行われることが多かったことから、「地下牢」を原義とするダンジョン（Dungeon）という言葉は、かつて拷問が行われた場所としてのイメージとも結びついている。

現代においては、歴史的な側面やエンターテイメントとして、拷問が行われた時代の雰囲気を再現した博物館やアトラクション施設が存在する。代表的なものとしては、以下のような場所が挙げられる。

ロンドン・ダンジョン
ブラックプールタワー・ダンジョン
ウォリック・ダンジョン
ヨーク・ダンジョン
ベルリン・ダンジョン
ハンブルク・ダンジョン
アムステルダム・ダンジョン
サンフランシスコ・ダンジョン

これらの「ダンジョン」と名の付く施設以外にも、類似のテーマを持つ博物館や展示室が見られる。

恐怖の部屋（ロンドンのマダム・タッソー館にかつて存在）
恐怖の館（ハンガリーの歴史博物館）
中世犯罪博物館（ドイツ）

関連項目

拷問官に関連する情報としては、以下のようなものが挙げられる。

シャルル＝ジャン・バチスト・サンソン: サンソン家3代目当主。拷問官とも関連があったサンソン家の一員。
『ベルモンド Le VisiteuR』: 石岡ショウエイによる漫画作品。拷問官を主人公としたフィクション。
Tormentor: 「拷問官」を意味する英単語であり、文化作品のタイトルや名称にも用いられている。
Tormentor（バンド）: ハンガリーのブラックメタルバンド（1980年代）。
Tormentor (ミュージシャン): ノルウェーのブラックメタルバンド、ゴルゴロスの旧メンバー。
* Tormentor (歌): カナダのインダストリアルグループ、スキニー・パピーの楽曲。

もう一度検索