持船城

持船城（もちぶねじょう） - 静岡の歴史を語る城跡

持船城は静岡県静岡市駿河区用宗城山町に位置し、JR東海道本線用宗駅の裏手にある約70メートルの小高い丘に築かれた日本の城です。この場所からは、駿河湾や駿府の町が一望でき、古くから交通の要所として知られていました。

現在、持船城は「用宗城（もちむねじょう）」とも称されていますが、これは現在の地名に由来したもので、城が現役であった当時にはこの呼称は使用されていなかったと言われています。ただし、歴史的な資料には「用船城」との表記も見られ、 nautical に関連する可能性を示唆しています。持船、用船、用宗という名称の変遷は興味深いところです。

城の歴史

持船城は天文年間に今川氏の家臣、一宮元実の手によって築かれました。初めての城主たち、関口親永やその子孫は、城を駿河守備の重要な拠点として利用していました。しかし、桶狭間の戦いを通じて今川氏が衰退すると、駿河国に侵攻してきた武田信玄の攻撃を受け、城は奪われてしまいます。

武田氏の城代として三浦義鏡が城を治めた後、武田水軍の向井正重が加わり、持船城は水軍の機能も兼ね備えるようになりました。駿河湾に面している立地を生かし、周囲に新しい湊が作られ、舟溜まりが形成されたことでこの城に「持船」の名称が付けられたとされています。

天正7年（1579年）には、徳川家康が駿河に侵攻し、城は再び攻撃を受けて落城します。三浦義鏡や向井正重ら城代は討死しますが、翌年に武田勝頼によって取り戻され、朝比奈信置が新たな城代として迎え入れられました。ところが、天正10年（1582年）に甲州征伐で再度家康が攻めてきた際、城は降伏を余儀なくされ、朝比奈信置は久能山へ退去し、結局この城は廃城とされました。

現在の城跡

今日においても持船の名は「用宗」として地域の地名となり、周囲にはミカン畑が広がっています。城の主郭には碑が建てられており、そのそばには観音堂がありますが、昭和62年（1987年）に廃され、今は廃屋となっています。また、古井戸跡や堀割の跡も見受けられ、かつての城の姿を物語っています。

持船城から約100メートルの場所には「城山列士供養塔」があり、ここには徳川家康に最初に攻められた際に討死した向井正重らの名が刻まれています。この供養塔は、彼らの勇敢な戦いを記憶に留める重要な場所です。

さらに、東海道新幹線と東名高速道路が城山を横断し、現在でもこのエリアは交通の要衝としての地位を持っています。持船城は、その歴史的背景と美しい環境から、訪れる者に多くのことを語りかけているのです。

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