朝比奈信置

朝比奈信置の生涯と業績

朝比奈信置（あさひな のぶおき）は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将である。彼は今川氏と甲斐武田氏の家臣として知られ、庵原城の城主でもあった。信置の本名は元長および政貞ともされている。

今川家の時代

信置は朝比奈家の末裔に属するが、今川氏の名将である朝比奈泰能や泰朝とは別系統の家系と考えられている。静岡市清水区に保存されている『朝比奈系譜』によると、彼は朝比奈元長（親徳）の嫡子であるとされているが、近年の研究の結果、父の名前は「親徳」であることが明確になり、元長は信置が今川家に仕えていた際の呼び名であった可能性も指摘されている。

1548年、天文17年には小豆坂の戦いで先陣を務め、その手柄を評価された。また、『甲陽軍鑑』によれば、信置は山本勘助を今川義元に推薦した人物とも言われている。1569年には、武田信玄の駿河侵攻に際して武田方に仕官することとなった。

甲斐武田家の時代

信置は武田信玄から庵原領を授けられ、彼の名に一字を受け継いで「信」という文字をも与えられた。駿河先方衆の筆頭に重用され、150騎を持つ武将としてその名を馳せた。信置が庵原郡の領主であった頃、彼は武田勝頼の時代にも、その地位を保持しつづけた。江尻城は武田氏の駿河における支配の拠点であり、穴山信君が城代として名を馳せていた。

1575年の長篠の戦いにも参戦し、1580年には持船城の城代を務めるなど、引き続き戦国時代の武将としての活動を展開していた。

武田征伐

1582年、織田信長と徳川家康の連合軍が武田家への征伐を開始すると、信置は持船城を守っていたが、2月21日に開城を余儀なくされた。さらに、庵原山城も徳川軍に落城し、武田勝頼が自害したことにより、武田家は滅亡した。信置も同年4月8日に、織田信長の命令を受け自ら命を絶った。享年55歳であった。また、信置の嫡子である信良も、武田家滅亡の際に諏訪で織田軍に討たれている。

人物

『甲陽軍鑑』によれば、信置は優れた軍略家であると評価され、武田家の重臣たちからも信頼を寄せられていた。また、駿河守という名のもと、武田家の板垣信方や毛利家の吉川元春と並んで、「戦国の三駿河」と称されるほどの存在感を放っていた。

系譜

信置の父は朝比奈元長（?-1566）で、母や妻についての詳細は不詳である。子どもたちには朝比奈信良（?-1582）、元永、宗利、信清がいる。特に三男の宗利は徳川家康のもとに仕官し、持船城の城代としてその名を残した。彼の系譜は江戸時代まで引き継がれていった。

その業績と生涯は、戦国時代の武将として忘れられない存在である。

もう一度検索