振戦せん妄

振戦せん妄について

振戦せん妄、または振戦譫妄（しんせんせんもう）は、アルコールの急激な中断によって引き起こされるせん妄の一形態であり、その症状は急性の精神的および身体的変化を伴います。この状態は英語圏で「delirium tremens」と呼ばれ、直訳すると『震える錯乱』となります。振戦せん妄は特に重篤な症状を伴うことが多く、文字通り患者は震えや興奮、そして誤った認識による幻覚に悩まされることになります。

症状

振戦せん妄の主な症状は多岐にわたります。具体的には、悪夢や興奮、広範囲な混乱、自己認識の障害、さらには視覚や聴覚の幻覚です。これらの症状は突然に出現することがあり、通常、大量のアルコール摂取を止めてから2～3日後に現れ、4～5日目に最も激しさを増します。また、これらの症状は特に夜間に悪化することが知られています。振戦せん妄はアルコールの離脱において最も重い症状の一つであり、最終的には精神的な混乱や身体的な影響（震え、発汗、動悸など）が併発します。

原因

振戦せん妄は、長期にわたる飲酒の後に突然の断酒が引き起こす生化学的な変化によって主に発生します。具体的には、アルコール依存症者やベンゾジアゼピン系、バルビツール酸系の薬剤への依存が原因となります。これらの療法からの突然の離脱によっても、症状が現れることがあります。特に飲酒量が多い場合や長期間、アルコールを摂取していた場合には、発症のリスクが高まります。

治療

振戦せん妄の治療には主にベンゾジアゼピン系薬が用いられます。これらの薬剤は患者を鎮静させ、離脱症状を軽減する効果があります。ジアゼパムやロラゼパム、クロルジアゼポキシド、オキサゼパムといった薬剤が一般的に使用されるため、症状が収まるまで必要に応じて調整されます。また、患者の状態に応じて少量の抗精神病薬が使われることもありますが、注意が必要です。ベンゾジアゼピン系薬の使用が乏しい場合、抗精神病薬の服用は逆に発作を促すことがあるため、慎重な判断が求められます。

予後と予防

振戦せん妄の患者は、治療後に数ヶ月間、不安や不眠といった長期的な症状が続くことがあります。これに対処するためには適切な医療的支援が重要です。また、内科医は、高リスクのアルコール依存患者には入院時からジアゼパムを投与し、離脱症状を予防することが推奨されています。

振戦せん妄は、根本的な原因が取り除かれない限り再発する可能性があります。したがって、再発を防ぐための継続的な治療とサポートが必要です。適切な環境を整えることも重要で、明るく静かな環境が症状の軽減に役立つことが報告されています。

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