クロルジアゼポキシド

クロルジアゼポキシド：最初のベンゾジアゼピン系抗不安薬

クロルジアゼポキシドは、1950年代後半に開発された、世界で最初のベンゾジアゼピン系抗不安薬です。不安、緊張、抑うつ症状などの治療に用いられ、日本でも1961年から販売されています。しかし、その効果の裏には、依存性や離脱症状といったリスクも潜んでいます。そのため、適切な使用と慎重な管理が不可欠です。

作用機序

クロルジアゼポキシドは、脳内のGABA受容体に作用することで、神経の興奮を抑える効果を発揮します。これにより、抗不安作用、鎮静作用、筋弛緩作用、抗けいれん作用など、多様な効果が得られます。薬効の発現には個人差があり、効果が現れるまでには数時間かかる場合もあります。

適応症

クロルジアゼポキシドは、主に以下の症状の治療に用いられます。

神経症における不安、緊張、抑うつ
うつ病における不安、緊張
心身症（胃・十二指腸潰瘍、高血圧症など）における身体症状と不安、緊張、抑うつ

禁忌事項

以下の患者さんには、クロルジアゼポキシドの使用が禁忌とされています。

ベンゾジアゼピン系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者
急性狭隅角緑内障の患者
重症筋無力症の患者

また、アルコールや他の中枢神経抑制剤との併用は、相互作用による副作用増強の可能性があるため、注意が必要です。モノアミン酸化酵素阻害薬、塩酸マプロチリン、ダントロレンナトリウムとの併用も同様です。

副作用

クロルジアゼポキシドの一般的な副作用としては、眠気、ふらつき、めまい、頭痛、倦怠感などが挙げられます。まれに、黄疸、血液異常、循環器異常、消化器症状（吐き気など）、皮膚異常などが起こる可能性もあります。

重大な副作用としては、依存性、興奮、錯乱、呼吸抑制などが報告されています。特にアルコールとの併用は、中枢神経抑制作用が増強され、副作用が強まるため、厳禁です。

依存性と離脱症状

クロルジアゼポキシドは、長期にわたって使用すると依存性を生じる可能性があります。そのため、使用期間は必要最小限に抑え、徐々に減量していくことが重要です。急激な減量を行うと、離脱症状（不安、不眠、震え、けいれんなど）が現れる可能性があります。

日本では、2017年に重大な副作用として依存性と離脱症状に関する情報が追加され、医療機関への周知徹底が図られました。漫然とした長期使用は避け、医師の指示に従って適切に服用することが大切です。

高齢者への使用

高齢者は、薬物代謝が低下しているため、クロルジアゼポキシドの作用が強くなり、副作用が現れやすくなります。そのため、高齢者への使用は慎重に行う必要があります。長時間作用型のベンゾジアゼピン系薬剤は、高齢者には使用を避けるべきだとするガイドラインもあります。

まとめ

クロルジアゼポキシドは効果的な抗不安薬ですが、依存性や離脱症状のリスクを伴います。医師の指示をきちんと守り、安全に使用することが大切です。 自己判断での服用や、他の薬との併用は避け、専門家の指導の下で使用しましょう。何か異常を感じた場合は、すぐに医師に相談してください。

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