掛け声

掛け声 (かけごえ)

掛け声とは、日本の様々な伝統芸能や行事で用いられる、叫び声や呼びかけのことを意味します。日本の伝統音楽や歌舞伎、さらには剣道などの格闘技において、観衆が役者や演者に向けて発する声は、その場の雰囲気を盛り上げる重要な要素となっています。これらは単なる声の掛け合いではなく、文化的な背景を持つ表現でもあります。

歌舞伎における掛け声

歌舞伎の舞台では、観客が「大向こう」と呼ばれる掛け声をかけることがあります。この行為は、役者に対する応援や賛美を示すもので、特に観客の感情が高まった瞬間に適したタイミングで行われます。例えば、役者が見得切り（決めポーズ）を決めた時に、観客はその瞬間に屋号や役者の名前を呼ぶことで、一体感を感じます。

前評判が高い演目の場合、幕が上がる直前に「まってました！」というような掛け声も聞かれ、いずれも観客が役者に対して強く感情を表現する手段となっています。また、定期公演が行われる劇場では、掛け声を楽しむための「声かけ会」なる組織も存在し、参加者は自由に掛け声を楽しむことができます。

民謡と掛け声

一方で民謡の世界でも掛け声は重要な役割を果たしています。民謡の中では、歌詞の間に感情を込めた声を自由に挿入することが特徴的です。これらの声は、歌や踊りの演者を励ますものとして用いられ、「そおれっ！」や「どんとこい！」といった言葉が一般的に使われます。

これらの掛け声は、特に「ソーラン節」や「真室川音頭」のような有名な民謡で効果的に使われ、歌のリズムを盛り上げたり、地域特有の掛け声がその文化的背景を示したりする役割も果たしています。

邦楽のアンサンブルにおける掛け声

邦楽のアンサンブルでも掛け声は重視されています。お囃子や長唄、津軽三味線などの演奏においては、掛け声が演奏の開始や終了、または楽器の導入を示す重要なシグナルとなります。特に、太鼓リーダーが掛け声を上げることで、次のリズムの合図を送ることをよく行います。これにより、演者同士が演奏の流れを意識して協力できるようになります。

祭りにおける掛け声

日本各地の祭りでも、掛け声は活用されています。地域によって特色が異なるため、東京都では「せいやせいや！」や「わっしょいわっしょい！」といった掛け声が神輿を担ぐ際に使用されます。一方、浜松まつりではカイトと木製カートに対して「おいしょ！おいしょ！」と盛り上げる声が使われ、さらに桑名市の石渡まつりでは「コラサ」や「ホイサ」のような掛け声が披露されます。

大阪の岸和田市の「だんじり」祭りも有名で、参加者が回転する神社を引っ張り合う時には「ヨイ、サ！」という掛け声が響きます。これらの声は、英語で言うところの「heave, ho!」に似た意味合いを持ち、各地域ごとに異なるメロディやリズムが生まれています。

掛け声は、このように日本のさまざまな文化や伝統に深く根づいた表現形式であり、観客や参加者に一体感をもたらす重要な役目を果たしています。

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