掾

掾（じょう）についての解説

掾（じょう）とは、日本の律令制度下における四等官の一つで、国司の第三等官を指します。この役職は中央政府における「判官」に相当し、重要な位置付けとされていました。掾の存在は中世以後、さらにその意味が広がり、職人や芸人にも名誉称号として授与されるようになりました。

国司の官名としての掾

国司の四等官は、「守（かみ）」「介（すけ）」「掾（じょう）」「目（さかん）」の四つの役職から構成されます。掾の漢字の音読みは本来「エン」ですが、三等官の表現としては「じょう」と訓読されます。この読み方は、唐の官庁の一部における三等官の呼称である「丞」に由来しているとされています。国司の制度について、大宝令や養老令では国の規模に応じて配置される官の数に差があり、すべての等級が揃わないこともありました。特に小規模な国では掾が置かれることがなく、大規模な国では「大掾」や「少掾」が設けられることがありました。たとえば、上国に位置する地域では掾が存在し、下国でも時折設置されることがあったため、実際の運用状況はさまざまでした。

職人や芸人への名誉称号としての掾

律令制下での掾の役職は、時代が進むにつれて職人や芸人に対する名誉称号へと変化しました。中世以降、宮中や宮家から職人や芸人に対してその技術や芸を称賛する意味で、掾号が授与されるようになったのです。この称号は、技芸を持つ者たちにとって大きな名誉であり、特に刀工や商人、芸人などの層に広がっていきました。ここで、掾号を受け取ることを「受領する」と言います。

浄瑠璃太夫に与えられた掾号

職人や芸人に与えられた名誉称号の中でも、特に浄瑠璃太夫に授けられる掾号は、後代にまで重要な意味を持ちました。江戸時代中期以降は、主に浄瑠璃太夫に関連づけられ、掾号の受領は彼らにとって最高の名誉とみなされました。掾号には、大掾、掾、少掾の3つの等級があり、受賞した者の名声を高める要因ともなりました。

江戸時代には、嵯峨御所や宮家から授与され、戦後もその伝統は続きました。1947年には、豊竹古靱太夫が秩父宮家から山城少掾を、1956年には吉田文五郎が東久邇家から難波掾を受領しました。この名誉はほとんどが義太夫節の太夫によって受けられていましたが、他の流派の浄瑠璃太夫が受領するケースも見られました。たとえば、1955年には清元志寿太夫が高松宮家から志摩大掾を受け取るなど、多様な流れが見られました。

結論

掾という名誉称号は、日本の歴史において重要な意義を持ち、特に浄瑠璃の世界での地位を確立する上で大きな役割を果たしました。技芸の向上を讃え、士族や庶民の文化を融合させる象徴でもあり、古の日本の文化を今に伝える貴重なアーカイブと言えるでしょう。

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