揚子江協定

揚子江協定（ようすこうきょうてい）

揚子江協定は、1900年10月16日にイギリスとドイツ帝国の間で締結された重要な合意です。この協定は、1899年に清国で発生した北清事変に関連し、イギリスとドイツが自国の権益を保護する目的で結んだものです。一般的には英独協定と呼ばれ、多くの文献でもそう記されています。

この合意は、イギリス首相ソールズベリー卿と駐英ドイツ大使パウル・フォン・ハッツフェルト伯爵の署名によって成立しました。協定の主な内容は、中国の領土の保全に関する声明を含み、列強が清国を分割することに反対する姿勢を打ち出したものでした。

協定の背景

揚子江協定を理解するためには、当時の国際情勢を考慮する必要があります。ロシア帝国は1898年3月に清国から旅順と大連の租借権を獲得し、その結果、北中国における軍事的優位性を確立しました。これに対抗するため、イギリスの植民地大臣ジョゼフ・チェンバレンは、「悪魔（ロシア）と共に食卓を囲むには長いスプーンが必要」との演説を行い、イギリスが孤立を脱する必要性を強調しました。彼は、イギリスが中国市場の利益を守るためには戦略的同盟が不可欠であると訴えました。

このような背景の下、イギリスはドイツと日本を潜在的な同盟国として位置づけ、その権益を調整する姿勢を見せました。ドイツも、ロシアとの国境にありながら自らの利権を拡大したい思惑があり、両国の連携は共通の利害という点で重要でした。

協定締結後の動向

揚子江協定の締結後、ロシア帝国が大規模な兵力を動員して義和団の乱を鎮圧した際、この国は八カ国連合軍の指揮権を得ようとして、英独の関係に亀裂を生じさせました。これを受け、イギリスとドイツはさらなる連携を模索し、協定を推進することになったのです。

協定の核心には、清国の領土を保全し、イギリスとドイツの影響下での貿易の自由を保証するという理念がありました。これにより、イギリスは長江下流域の権益を守ることが確認され、この地域における新たな政治的枠組みを形成する一助となりました。

また、当時の日本もこの協定に参加する意向を表明しました。日本にとって、揚子江協定は東アジアにおける立場を強化するための機会と捉えられました。ドイツの外交官は日本を含めた三国同盟の提案を持ちかけ、日本の指導者たちもこれに賛同する意向を示しましたが、国内の政治状況が不安定であったため、協定の実現は困難でした。

結び

揚子江協定の締結は、当時の国際秩序において重要な意味を持った出来事でした。列強が出した領土保全の宣言は、後の中国の分割や国際貿易の流れに大きな影響を与え、さらには日本とイギリスの関係を深める契機にもなりました。このように、揚子江協定は単なる二国間の合意を超え、アジアにおける地政学的なダイナミクスを変える一助となったのです。

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