揚武 (大韓帝国軍艦)

揚武号の歴史

揚武号（ようぶごう）は、大韓帝国が初めて保有した軍艦であり、その歴史は興味深いものである。もともとは、1888年2月13日にイギリスのミドルズブラにあるレイルトン・ディクソン社によって建造された貨物船で、当初「パラス」という名前で運用されていた。この船は、1894年に日本の三井物産によって購入され、「勝立丸」（かちだてまる）と改名され、主に南洋諸島や香港と日本の間で貨物を運ぶ商船として使用されていた。

軍艦としての改装

1903年、本船は大韓帝国に売却され、軍艦としての改装が施された。これに伴い、「揚武」と名付けられた。艦長には、第一次官費留学生で東京商船学校出身の愼順晟が任命された。大韓帝国の高宗は、即位40周年を記念して、他国の軍艦と礼砲を交わすためにこの軍艦を導入した。しかし、予算面での難航や政局の不安定さから、その目的は果たされないまま終わってしまった。

兵装としては、12cm単装砲が両舷に各1基ずつ、さらに47mm速射砲が船橋と船尾楼に各1基ずつ装備されていた。大韓帝国にとって、この艦船は初の近代的な軍艦であり、国防の一翼を担う存在となった。

日露戦争と役割

日露戦争が始まると、揚武号は日本海軍によって臨時的に使用されることになった。1904年2月9日、開戦直後には仁川港で停泊していたが、その行動は特に顕著ではなかった。他方、戦争が激化する中で本船は日本海軍の仮装巡洋艦として運用され、兵装の増設や各種改装を受けながら戦場に赴いた。まもなく、艦は海州で任務に就き、兵員や物資の輸送、艦隊の護衛などに従事した。

戦後の展開

日露戦争後、揚武号は大韓帝国に戻されたが、1909年には原田商行に42,000ウォンで売却され、「勝立丸」として再び日本の商船籍に戻った。この時期、商社としての運用が続けられたが、1916年の海難事故により沈没する運命を辿った。出航から数日後、激しい天候に見舞われ、浸水と損傷が続き、最終的に済州島南西沖で沈没。乗組員は「干珠丸」に救助され、命を救われることとなった。

まとめ

揚武号の物語は、一つの艦船が抱えた多くの歴史的背景を物語っている。大韓帝国が始めて手に入れた軍艦として、その役割は日本海軍との連携や、国防意識の高まりを示している。日露戦争という国際的な緊張の中で活動し、またその後の商業船としての顔を持ちながらも、最終的には海の底に消えていく様は、歴史の流れの中で如何に艦船が影響を受けてきたかを知る良い例である。

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