損田

損田（そんでん）について

損田とは、古代および中世において、洪水や旱害、虫害、霜害などの自然災害によって収穫が減少した田地を指します。また、不熟田とも呼ばれ、回復が完全に不可能な不堪佃田とは異なります。この用語は、農業における自然の影響とその経済的結果を示す重要な概念です。

概要と歴史的背景

日本の律令制においては、損田や得田といった用語が使われ、これらは自然災害の影響を正確に把握するために作成された輸租帳に掲載されていました。国司は実際の状況を確認し、経済的な損害を評価することが求められ、これによって太政官に報告されました。損田が認識されると、租税の計算が見直され、全体の面積から損田を除外したものが「得田」となります。

農民は、自然災害によるダメージの程度に基づいて租の免除を受けることができ、災害の影響が10分の5以上であった場合には租金が免除されます。さらに、災害の程度が10分の7以上であれば、租と調が全て免除される可能性があります。このように、高い損害を被った場合には、次年度分の租税が軽減される制度がありました。

律令政府は、不正行為を防ぐために国司に損田の目録帳を提出させ、これを厳しく管理するよう努めました。また、慣習法に基づいて、10分の4以下の損失に対しても「半輸」として、損害の程度に応じた減税が実施されていました。例えば、天平12年（740年）の『遠江国浜名郡輸租帳』では、「半輸」という実例が記録されています。

荘園制と損田

荘園制度においても、損田は重要な要素でした。植え付け後に自然災害が発生した場合、年貢の免除や減免が認められる田地として「損田」とされ、内検帳には特定の表記がされていました。この場合、収穫があった田地は「得田」として記載されていました。名目上は検注によって管理されましたが、実際には百姓と領主との交渉によって損免額が定まっていました。

江戸時代においても、農業の収穫状況に基づき「損毛」として特定の水田に対する検見が実施され、徴税率が引き下げられることもありました。このように、損田は日本の農業や税制において、災害の影響を前提とした重要な観念として認識されていました。

結論

損田の概念は、古代から中世を通じて、自然災害の影響を調整し、農民が経済的に持続可能であるための制度の一部として存在していました。収穫の減少が国や農家に及ぼす影響を考慮することで、その歴史的な役割が明らかになっています。

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