携帯電話依存症

携帯電話依存症とは

携帯電話依存症、または携帯中毒とは、携帯電話やPHSなどのモバイル機器が提供するサービスに過度に没頭し、日常生活に支障をきたす状態を指す俗語です。特にスマートフォン（スマホ）の普及に伴い、その依存度は深刻化しています。

関連語として、「ツナガール」という言葉がありますが、これは女子学生が携帯電話を通じて常に誰かと繋がっていたいという心理を表す言葉です。しかし、同じ名称の接続機器や携帯電話会社のキャッチフレーズも存在するため、注意が必要です。

携帯電話が手元にないことへの不安は、「ノモフォビア」という造語で表現されることもあります。

2013年の調査では、日本国内で約421万人がスマートフォン依存であると推計されています。

症状

携帯電話依存症の主な症状は、以下の通りです。

精神的な不安定: 携帯電話が手元にない、または使用できない状況（圏外、充電切れなど）になると、精神的に不安定になったり、パニックに陥ることがあります。
悪循環: 携帯電話を入手してすぐに依存が始まり、常に誰かと連絡を取りたくなり、携帯電話が手放せなくなるという悪循環に陥ります。
学業への悪影響: 携帯電話に熱中するあまり、学習時間が確保できず、成績が低下することがあります。
生活習慣の乱れ: 夜中にメールの返信に追われ、睡眠時間が減少し、生活習慣が崩れることがあります。
精神的なストレス: 携帯電話を介した同調圧力に適応しようとするため、精神的なストレスを感じ、抑うつ傾向に陥るリスクがあります。
メール依存: メールの返信が途絶えた際に不安を感じたり、頻繁に新着メールをチェックしたりするようになります。これは、メール交換が情報伝達だけでなく、他者との繋がりを求める行為になっていることが背景にあります（社会学者、北田暁大の言う「つながりの社会性」）。

調査・考察

携帯電話依存症は、精神医学分野で明確な研究が進められているわけではありませんが、社会的な問題として認識されています。

韓国では、2006年のインターネット依存症調査において、青少年の10人に1人が携帯電話の利用に依存していると回答しています。成人の依存率が4.1％であるのに対し、青少年層の依存率が高いことが明らかになっています。

日本の中学生を対象としたアンケート調査では、「携帯電話がないと落ち着かない」「夜寝る時も気になって携帯電話の電源が切れない」という質問に対し、女子の方が肯定的な回答が多い傾向があり、性差による影響が示唆されています。

社会学者の鈴木謙介氏の調査によると、男性はリーダーシップを発揮するタイプに依存傾向が見られ、女性は友人関係に依存しがちなタイプに依存傾向が見られると指摘されています。

社会学者の土井隆義氏は、人間関係から隔離されることはいじめの対象となる危険性を増大させると指摘し、携帯電話が圏外になった時にパニックになる現象は、いじめの場が現実空間から仮想空間に移行していることを示唆すると述べています。

携帯電話の多機能化

現代の携帯電話は、単なる通信手段としてだけでなく、電子マネー、カメラ、テレビなど、多岐にわたる機能を提供しています。そのため、携帯電話が使用できなくなることは、他者との繋がりを失う「孤独」の問題だけでなく、携帯電話によって得ていた様々な能力を一時的に失う「苦痛」を伴うことになります。

関連用語

共依存: 携帯電話依存症には、共依存状態が見られる可能性が指摘されています。常に誰かと繋がっていたいという欲求の裏には、自己肯定感の低さや、人間関係における不安が潜んでいる場合があります。
ネット中毒: インターネット依存症は、携帯電話依存症と密接な関係があり、両方の依存を併発しているケースも少なくありません。
* スマートフォン依存症: スマートフォンは、携帯電話よりも多機能で依存性が高いため、スマートフォン依存症という言葉も広く使われています。

まとめ

携帯電話依存症は、単なる俗語ではなく、現代社会において深刻な問題です。その背景には、社会構造の変化や人間関係の希薄化など、様々な要因が複雑に絡み合っています。この問題を解決するためには、個人の意識改革だけでなく、社会全体での取り組みが不可欠です。

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