摂泉十二郷

摂泉十二郷の概説

摂泉十二郷（せっせんじゅうにごう）は、近世の日本酒の歴史において重要な役割を果たした地域組織です。この概念は、主に摂津国と和泉国の酒蔵が集中している地域を指し、具体的には大阪、伝法、北在、池田、伊丹、尼崎、西宮、今津、兵庫、上灘、下灘に堺を加えた11の地域を含みます。摂泉十二郷の制度は、1783年（天明3年）から1874年（明治7年）までの間存続しましたが、その地域的な結びつきはさらに古い時代から存在していました。

地域と呼称

一般的に、池田郷や伊丹郷のように、それぞれの地名の後に「郷」をつけた呼称で知られています。この「郷」という言葉は、通常、大阪および北在を除く一つの村のような小さい地域を示しています。具体的には、大阪は江戸幕府が設けた大坂町奉行所の管轄内で、北組、南組、天満組に分かれ、「大坂三郷」と呼ばれます。北在は、散在した酒蔵を含む広域の地域名として位置づけられています。どの地域も現代の町名にあたりますが、摂泉十二郷はその酒造業の集まりとして独自の文化と歴史を形成しています。

制度と運営

摂泉十二郷では、大坂三郷から酒造大行司を選出し、その人物が全体の酒造業を取りまとめていました。彼らは、江戸の酒問屋との交渉や地元の利益の調整を行う役割があり、この役割は現代の商工会議所の会頭に似たものと言えるでしょう。このような酒造組合制度は、利害が対立する新旧の地域間でこれらの利害関係を調整し、平和的に運営されました。

歴史的背景と発展

江戸時代初期において、江戸への酒の出荷は重要で、特に城下町や宿場町が発展の中心でした。酒は主食である米を原料にしているため、幕府や藩の厳しい酒造統制のもとで行われました。1642年には早くも減醸令が発布され、経済政策の一環として酒造業界が管理されるようになりました。このため、地域ごとの酒蔵数を把握するための基本台帳も必要となりました。

時間が経つにつれ、摂泉十二郷に所属する酒蔵は増え、1708年には更に多くの地域から江戸への下り酒が出荷されるようになります。これに伴い、多くの酒郷は繁栄と衰退を繰り返しながら、特に灘を中心にした新興の酒造地が発展を続けていきました。

摂泉十二郷の創立

摂津と和泉の多くの酒郷は、もともと尼崎藩の領地であったが、1762年に石谷淡路守清昌がこの地域の特性を見込んで天領化を提案しました。結果として江戸初期からの重要な酒郷が形成されることになります。この中で、九郷と新三郷がそれぞれ存在し、後には灘目三郷と呼ばれるようになりました。

1770年代には、摂泉十二郷における酒の出荷についてのトラブルが増加し、1783年にこの組織が正式に定められました。これは、旧九郷が新三郷を取り込みつつ、整理された酒造体制の一環でした。

解散とその後の影響

摂泉十二郷は約90年の間、その存在を維持しましたが、明治維新を迎えると状況が変わりました。江戸幕府の酒造統制が撤廃され、新たな酒税制度が模索されていたため、組織としての摂泉十二郷の意義が問われるようになりました。最終的に1874年8月、今津と西宮の二つの郷が「摂泉十二郷の存続は無理」と判断し、解散を決定しました。

このように摂泉十二郷は、江戸期後の酒造業に多大な影響を与え続け、その名残は現代の日本酒の文化に深く根付いています。

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