摩擦 (クラウゼヴィッツ)

摩擦（まさつ）

軍事学において「摩擦」は、計画・命令を実行する過程で直面するさまざまな障害を指します。この概念を初めて取り入れたのは、著名な軍事理論家カール・フォン・クラウゼヴィッツです。彼は著作『戦争論』の中で、戦争における摩擦の重要性について論じており、天候や敵の予期しない行動、偶発的な事件などが、計画を実行する際に大きな障害となることを指摘しています。これらの要素は、理論的な戦争と実践的な戦争の違いを際立たせるもので、現実の戦場における不確実性を象徴しています。

摩擦の新たな解釈

近年、核兵器の出現によって摩擦の概念が進化しました。特に、偶発的なエスカレーションや軍事的な誘因など、現代の戦争では新たなリスクが現れています。これに対処するために、国際連合や国際法は伝統的な開戦法規で監視し、偵察や通信技術の刷新によって情報環境の改善を図っています。とはいえ、摩擦の存在は変わることなく、大規模な計画では特にその影響を受けやすく、指揮官はこれに対処することが重要な任務となります。

摩擦の主な種類

摩擦は大きく分けて以下の三種類に分類されます。これらはそれぞれが組み合わさることで新たな摩擦を生むことがあります。

1. 対内的な摩擦
自軍や政府の組織特性に起因します。情報の不均一な伝達や意思の誤解が生じ、作戦の執行に支障をきたすことがあります。

2. 対外的な摩擦
敵の行動から生じるもので、開戦前や戦闘中においても、自軍の行動は常に敵の動きに左右される可能性があります。

3. 環境的な摩擦
自然環境や国際政治の状況、たとえば気候、地形、そして非直接的な当事国との関係も、摩擦の要因となり得ます。

摩擦の概念は、敵味方を問わず影響を及ぼすため、戦略や戦術によって場合によっては意図的にこれを活用することも可能です。戦略の中に摩擦を考慮に入れることで、柔軟で効果的な戦術が構築できるかもしれません。

参考文献

• - カール・フォン・クラウゼヴィッツ、清水多吉訳『戦争論』中公文庫、2001年。
• - Simpkin, R. E. Race to the swift: Thoughts on twenty first century warfare. London: Brassey's. 1985.
• - Lebow, R. N. Clausewitz and crisis stability. Political Science Quarterly 103(spring):81-110.
• - Benoist-Mechin, J. Sixty days that shook the West: The fall of France, 1940. New York: Putnam. 1963.

関連項目

• - 戦場の霧
• - ランチェスターの法則
• - アクシデント、ブラック・スワン理論
• - 訓令戦術

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