播州の秋祭り

播磨地方に息づく伝統：播州の秋祭り

兵庫県南西部の播磨地域では、秋になると大小様々な神社で盛大な秋季例大祭が執り行われます。これらを総称して「播州の秋祭り」と呼びます。多くの祭礼では、地域住民が制作し受け継いできた屋台（太鼓台）が中心となり、神輿の渡御に寄り添い、祭りを華やかに盛り上げます。

祭りの概要：神輿渡御と屋台の練り出し

播州の秋祭りは、多くの場合、神輿を御旅所へ渡御する神幸祭形式です。屋台は神輿とは異なる役割を持ち、渡御のお供や神前での奉納などを通して祭りを彩ります。地域によっては「ヤッサ」「ヤッタイ」「タイコ」など、様々な呼び名で親しまれてきました。古くは「御先太鼓」「家台」「矢台」などと呼ばれ、18世紀頃には屋台の練り出しが行われていた記録が残っていますが、その起源は明確には分かっていません。屋台と形態が類似する山車も、太鼓台と総称される場合が多いです。

開催時期と地域：伝統を継承する秋

毎年10月を中心に行われることが多いものの、自治体の記念行事やイベント、社会情勢の影響で、時期がずれたり、中止・自粛となる場合もあります。例えば、1988年の昭和天皇の容体悪化や、2020年～2021年の新型コロナウイルス感染拡大の影響が挙げられます。

基本的には播磨地域一帯で行われますが、元来播磨国であった但馬地域（朝来市など）や神戸地域（垂水区、西区など）、岡山県の美作地域（美作市など）でも見られます。特に岡山県美作市の大原秋祭りは、因幡街道の宿場町として栄えた歴史と、明治期に隣接する兵庫県佐用町から伝わった屋台の影響が考えられます。

服装と祭りの様式：多様な表現

参加者の服装は神社や地域によって異なりますが、多くの地域では法被や襦袢に鉢巻、足袋といった装束が一般的です。屋台の担ぎ手である練り子は、相撲の廻しを締める地域もあります。これは姫路市、高砂市、加古川市など一部地域に限られ、他の地域では珍しい光景です。廻し以外の服装としては、股引、ニッカボッカ、着流しなどが見られます。また、小学生以下の少年が太鼓を叩き、豪華な衣装を身に着ける地域もあり、その様子はカメラ雑誌や鉄道雑誌、ブログなどでも紹介されています。

屋台以外にも、獅子舞を奉納する地域が多く「播州は獅子どころ」と言われるほどです。その多くは伊勢の太神楽系統とされ、厚化粧をした少年が相手役（綾子）を務めるなど、独特の様式が見られます。一ツ物、龍王舞といった特色ある神事や民俗芸能も存在し、天正年間の記録にもこれらの祭礼が登場していることから、中世に起源を持つと考えられています。祭りでは、色とりどりの和紙を竹の先端に花のように折り込んだ「シデ棒」が使われ、練り歩きや沿道の目印として用いられます。高校野球の応援でも使われることがあります。

屋台の形態：地域による多様性

屋台の形態は地域によって様々です。屋根の形態から布団屋根型と神輿屋根型に大別され、布団屋根型は東播方面・北播方面、神輿屋根型は中播方面・西播方面に多く見られます。布団屋根型には、平たい屋根のものと山型にしたものがあり、神輿屋根型は神輿と同様に宝形造りの屋根が特徴です。これらの分類は必ずしも一定ではなく、地域によっては様々な屋台が混在しています。

屋台の練り方（神輿ぶり）も地域によって異なり、練り合わせ、台場練り、台場差し、チョーサーなど、様々な技法が見られます。掛け声は「ワッショイ」ではなく「ヨーイヤサー」が一般的で、そのルーツは諸説あります。「サラバ節」や「別れ打ち」といった、屋台の帰路や収納時に用いられる掛け声も存在します。

播州の秋祭りの魅力

播州の秋祭りは、地域住民の深い信仰心と、時代を超えて受け継がれてきた伝統が織りなす、独特の祭りの文化です。多様な屋台、神事、民俗芸能、そして独特の掛け声は、多くの見物客を魅了し続けています。 それぞれの地域に根付いた伝統を肌で感じることができる、まさに播州の秋ならではの体験と言えるでしょう。そして、その魅力は写真や映像などを通して、広く知られるようになっています。

もう一度検索