支庁

支庁（しちょう）とは

支庁とは、都道府県知事の権限に属する事務を分掌させるため、地方自治法に基づき条例で設置される都道府県の総合出先機関です。支庁は、その管轄地域自体を指す場合もあります。同様の機関として地方事務所や支庁出張所があります。

これらの機関には、議会や公選の長は置かれず、支庁長や所長は知事部局の一般職員が任命されます。主な業務は、旅券発給や納税証明書の発行など、地域ごとに行う方が効率的な窓口業務です。

支庁の歴史

設立の経緯

1871年の廃藩置県後、府県の統合が進む中で、旧県庁所在地などに支庁が設置される例が多く見られました。これは、府県の統治機構が整備される過程で、郡長と郡役所が府県の出先機関としての機能を持つようになったため、多くの支庁は廃止されました。

北海道と山形県の場合

北海道では、1897年に郡役所の代わりに支庁が設置されました。これは、人口が広範囲に分散している北海道の特性に対応するためでした。1922年には、市制施行に伴い支庁が再編され、14支庁となりました。

1926年には、内務省告示により18府県で25の支庁が設置されました。これは、郡長・郡役所の廃止に対応し、交通不便な遠隔地や離島に県の出先機関を設ける目的でした。この際、島庁が支庁に改組される例も見られました。

地方事務所への移行と再編

1942年の地方官官制改正により地方事務所が設置されると、多くの支庁が地方事務所に改組されました。しかし、その後、地方事務所の統合により支庁が新設される例もありました。樺太の4支庁も北海道と同様に扱われました。

1947年の地方自治法施行により、支庁は各都道府県が条例で定めることとなりました。現在では、地方事務所、地方振興局、行政センター、県民局などの名称が用いられています。

総合支庁

山形県では、地方事務所の上位機関として総合支庁が設置されています。2001年に業務のスリム化と権限移譲のため、地方事務所、保健所、福祉事務所、建設事務所などの機能を統合し、総合支庁と呼称するようになりました。

具体的には、村山、最上、置賜、庄内の各地方に総合支庁が設置されています。

支庁・地方事務所一覧

以下は、地方自治法155条1項を根拠として設置された、支庁・地方事務所の一覧です。

支庁・地方事務所を設置している都道府県

北海道：総合振興局・振興局に再編されましたが、地方自治法上の支庁として扱われています。広域行政を分担する振興局地域も存在します。
東北地方：青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県に設置されています。
関東地方：群馬県、東京都（島嶼部のみ）、神奈川県に設置されています。
中部地方：新潟県、石川県、福井県、長野県、岐阜県、愛知県に設置されています。
近畿地方：京都府、兵庫県、和歌山県に設置されています。
中国地方：鳥取県、島根県、岡山県に設置されています。
四国地方：徳島県、香川県、愛媛県に設置されています。
九州・沖縄地方：長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県に設置されています。

支庁・地方事務所がない府県

これらの府県では、分野ごとの出先機関（保健所、警察署、福祉事務所、土木事務所など）を設置しています。

具体的には、福島県、茨城県、栃木県、埼玉県、千葉県、山梨県、富山県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、大阪府、奈良県、広島県、山口県、高知県、福岡県、佐賀県、沖縄県などが該当します。

大正15年内務省告示第82号による支庁

大正15年の内務省告示によって設置された支庁には、東京府、長崎県、新潟県、三重県、岐阜県、福島県、岩手県、石川県、島根県、岡山県、広島県、和歌山県、愛媛県、高知県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県などに設置されていました。これらの支庁は、その後の行政改革や再編により、多くが廃止されています。

樺太の支庁

樺太には、豊原、大泊、留多加、敷香、元泊、真岡、久春内、泊居、本斗、恵須取、名好、鵜城の各支庁がありました。これらの支庁は、樺太が日本領でなくなったことで廃止されました。

外地の支庁

南洋群島には、南洋庁の管轄下で、東部支庁、ポナペ出張所、ヤルート出張所、北部支庁、西部支庁、ヤップ出張所が設置されていました。これらの支庁は、太平洋戦争の終結と共に廃止されました。

まとめ

支庁は、都道府県の行政機能を地域に分散させる重要な役割を果たしています。設置状況は都道府県によって異なり、時代や社会の変化に応じて再編や統合が行われてきました。支庁の歴史と現状を理解することで、地方行政の仕組みをより深く理解することができます。

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