支脚 (かまど)

支脚の概要

支脚（しきゃく）とは、日本列島の古代建物に付属しているカマドに関連する重要な道具です。この道具は煮沸用具である甕などをカマドの火床面から高く持ち上げて支え、調理効率を向上させるために使用されていました。支脚は特に、古墳時代から平安時代にかけて多くの遺跡から出土しており、その意義を理解することは当時の調理技術や宗教観にも光を当てる重要な手がかりとなります。

日本列島におけるカマドの歴史

カマドは、日本において古墳時代前期から中期にかけて朝鮮半島経由で伝来したと考えられています。初期の炉での調理法に比べ、カマドは熱効率が高く、5世紀から6世紀にかけて広く普及しました。カマドの設計には、可搬性を考慮した移動式のものもあれば、竪穴建物に固定された造り付けカマドも存在しました。

この後者の造り付けカマドは、土壁と床に造成され、前面には焚口があり、煙を逃がすための煙道も設けられています。こうした構造によって、調理時の火力を最大化し、効率的な調理を可能にしました。

支脚の機能と構造

支脚は、カマドの燃焼部の中心に位置し、煮沸具がそこに乗ることで高温の火炎を受けることができます。この位置にあることで、煮沸具の重量を分散しつつ、熱効率を高める機能を果たしていたと推測されています。支脚には、土器や川原石を利用した円筒形や長楕円形のものが多く見つかっており、中には土器を逆さにした形で使用されていたものや、鞴の羽口を流用した事例もあります。

人面付き支脚の発見

支脚には、まれに人面の彫刻が施されたものも見つかっています。たとえば、千葉県印旛郡酒々井町の飯積原山遺跡では、平安時代前期の竪穴建物から出土した土製の支脚に、眉や目、鼻が線刻されています。また、埼玉県の幡羅遺跡でも同様の発見があり、興味深いことに2023年には茨城県那珂市の下大賀遺跡から、人体の形を模した石製の支脚が見つかりました。このような特徴から、支脚は単なる道具以上の意義を持ち、カマド信仰の象徴でもあった可能性があります。

支脚の文化的意義

支脚は、基本的な調理の道具としてだけでなく、古代の人々の信仰や文化とも深く結びついていると考えられています。カマドにまつわる法律、儀式、そして生活習慣があったことから、これらの道具がどのように形作られ、使用されていたのかを探ることは、過去の人々の生活を理解する上で非常に重要です。

支脚とカマドは、単なる料理を超えた存在として、当時の社会や文化に密接に関連していたといえるでしょう。これらの道具を通じて、古代日本の人々の生活様式や精神世界を知る手がかりが得られるのです。

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