攻略本

コンピュータゲーム攻略本の歴史と現状

コンピュータゲームの隆盛とともに発展してきた攻略本は、単なるゲームのヒント集にとどまらず、ゲーム文化を深く理解する上で重要な役割を担っています。本稿では、攻略本の歴史、制作工程、そして市場における現状を詳細に解説します。

黎明期：ミニコミ文化から商業出版へ

日本で最初のゲーム攻略情報は、1970年代後半の『スペースインベーダー』ブーム時に見られたと推測されますが、攻略本というジャンルが確立されたのは1980年代のミニコミ文化によるところが大きいです。個人が作成した攻略情報は、同人誌の形で頒布され、後に著名なゲームクリエイターを輩出する土壌となりました。中でも、田尻智氏らが手がけた『ゼビウス 1000万点への解法』は、その代表例と言えるでしょう。ゲームセンターにおけるコンピュータゲームの普及と複雑化が、攻略情報の需要を大きく押し上げました。

ファミリーコンピュータの爆発的な普及を機に、商業出版による攻略本の市場が形成されていきます。『スーパーマリオブラザーズ完全攻略本』は60万部を超えるベストセラーとなり、攻略本市場の大きな成功事例となりました。ケイブンシャの「ゲーム必勝法シリーズ」など、多くの出版社が参入し、数々の攻略本が刊行されました。当時の攻略本は、紙質の粗さや誤植の多さが特徴的であり、現在では貴重な資料となっています。

成長期：ゲームの複雑化と攻略本の進化

1990年代に入ると、ロールプレイングゲームやシミュレーションゲームなど、クリアに時間を要する複雑なゲームが増加しました。それに伴い、攻略本のページ数も大幅に増加し、上下巻や複数巻に分割されることも珍しくなくなりました。同時に、ゲームの設定資料集やファンブックといった、攻略情報以外の要素も重視されるようになり、攻略本の多様化が進みます。装丁も豪華になり、判型もB6判からB5判、A5判へと大型化。カラー化や紙質の向上は、製作コストと販売価格の上昇につながりました。

変革期：インターネットと攻略サイトの台頭

2000年代に入ると、インターネットの普及により、攻略情報が容易に手に入るようになりました。攻略サイトの台頭は、攻略本の売上減少に繋がります。ユーザーは、同じゲームの攻略本を複数冊購入する傾向が減り、ゲームの寿命が短くなったことで、「最速本」よりも、より詳細な情報を網羅した「完全本」への需要が高まりました。しかし、「完全本」の発売時期が遅れる傾向があるため、攻略本は、攻略サイトでは得られない読み物的な要素も重視されるようになりました。

現代：ニッチな市場と新たな可能性

2010年代以降も攻略本の売上は低迷していますが、『妖怪ウォッチ2』や『あつまれどうぶつの森』といった人気ゲームの攻略本は、依然として高い売上を記録します。ゲーム[[雑誌]]の減少に伴い、攻略本を出版する出版社も減少傾向にあります。

攻略本の製作工程

攻略本の制作は、ゲームメーカーと出版社の連携が不可欠です。出版社は、ゲームメーカーから発売情報を取得し、市場性などを検討した上で、出版の可否を決定します。出版が決定すると、ゲームメーカーとの交渉、編集スタッフの人選、原稿作成、デザイン、校正など、多くの工程を経て、ようやく出版に至ります。編集スタッフは、編集者、ライター、ゲーマー、デザイナーといった役割分担で作業を進めます。ゲームメーカーからの情報提供の度合いによって、スタッフの作業内容や難易度も大きく変動します。

公式攻略本と非公式攻略本

かつては、独自に調査したデータに基づいて攻略本が作成されていましたが、現在はゲームメーカーからデータ提供を受けることが一般的です。メーカーから公式にデータ提供を受けて作成された攻略本は、「公式攻略本」または「公式ガイドブック」と呼ばれます。しかし、公式攻略本であっても、誤植や誤った情報が含まれる可能性があります。一方、メーカーの許諾を得ずに作成・販売される「非公式攻略本」も存在し、著作権問題に発展するケースもあります。

まとめ

攻略本は、ゲームの歴史とともに発展し、変化を遂げてきました。インターネットの普及やゲーム市場の変動など、外部環境の変化に柔軟に対応しながら、独自の進化を続けています。今後も、攻略本はゲーム文化における重要な存在であり続けるでしょう。

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