放射線業務従事者

放射線業務従事者とは

放射線業務従事者とは、放射線を取り扱う業務に従事する人のことを指します。これらの従事者は、法令によって定義され、登録制度や被曝限度などが厳格に定められています。

定義

放射線業務従事者の定義は、法令によって若干異なります。

電離放射線障害防止規則: 「管理区域内において放射線業務に従事する労働者」と定義されています。
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律（原子炉等規制法）: 「核燃料物質の使用、廃棄、運搬、貯蔵又はこれに付随する業務に従事する者であって、管理区域に立ち入るもの」と定義されています。
放射性同位元素等の規制に関する法律（RI規制法）: 「放射性同位元素等又は放射線発生装置の取扱い、管理又はこれに付随する業務に従事する者であつて、管理区域に立ち入るもの」と定義されています。
医療法施行規則: 放射線診療従事者として、「エツクス線装置、診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用粒子線照射装置、診療用放射線照射装置、診療用放射線照射器具、放射性同位元素装備診療機器、診療用放射性同位元素又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の取扱い、管理又はこれに付随する業務に従事する者であつて管理区域に立ち入るもの」と定義されています。
獣医療法施行規則: 医療法施行規則と同様の定義がなされています。

登録制度

原子力発電所などの原子力施設で放射線業務に従事する場合は、放射線従事者中央登録センターが運営する被曝線量登録管理制度への登録が必要です。登録された従事者には、放射線管理手帳が発行されます。この手帳には、個人識別情報、被曝歴、健康診断結果、放射線防護教育歴などが記録されます。原子力施設での業務後は、被曝線量などが中央登録センターに登録・管理されます。

原子力施設以外での放射線業務従事者には、このような登録制度はありません。しかし、事業者には、被曝が1日1ミリシーベルトを超えるおそれのある労働者について、測定結果を毎日確認し、3か月ごと、1年ごと、5年ごとの合計を記録し、30年間保存する義務があります。また、記録は労働者に通知しなければなりません。

被曝限度

電離放射線障害防止規則では、放射線業務従事者の被曝限度が定められています。

通常作業: 5年間で100ミリシーベルト、1年間で50ミリシーベルト（実効線量管理）
緊急作業: 100ミリシーベルト（実効線量管理）
妊娠可能な女子: 3か月で5ミリシーベルト（実効線量管理）
妊娠中の女子: 1ミリシーベルト（内部被曝）、2ミリシーベルト（腹部表面）

福島第一原子力発電所事故の際には、一時的に被曝限度が引き上げられましたが、現在は通常限度量に戻されています。

妊娠可能な女子は、緊急作業に従事することは認められていません。

保護具・作業衣

放射線業務従事者は、放射線から身を守るために適切な保護具や作業衣を着用する必要があります。

健康診断

放射線業務従事者は、放射線障害防止法、労働安全衛生法、人事院規則などの法令に基づき、指定を受ける前と定期的に健康診断を受ける必要があります。健康診断は、管理区域に立ち入る前と、その後定期的に行われます。

実施時期:
管理区域に初めて立ち入る前
RI規制法: 1年を超えない期間ごと
労働安全衛生法（電離放射線障害防止規則）、人事院規則: 6月以内ごと
実効線量限度または等価線量限度を超えて被曝したおそれのある場合は、遅滞なく実施
実施内容:
法令により定められた項目を実施。
記録および保存期間:
RI規制法: 実施年月日、対象者氏名、医師名、診断結果、措置を記録し、永年保存。
電離放射線障害防止規則: 記録様式が定められており、30年間保存。
いずれの場合も、本人に結果の写しを交付。

教育・訓練

放射線業務従事者は、RI規制法に基づき、教育・訓練を受ける必要があります。

実施時期:
初めて管理区域に立ち入る前
管理区域に立ち入った後、1年を超えない期間ごと
実施内容:
放射線の人体に与える影響（30分）
放射性同位元素等または放射線発生装置の安全取扱い（1時間）
放射性同位元素および放射線発生装置による放射線障害の防止に関する法令、放射線障害予防規程（30分）
教育および訓練の省略:
十分な知識と技能を持つと認められる場合は、一部または全部を省略可
ただし、法令改正後や予防規程改定後の直近の教育訓練では省略不可
記録の保存:
実施年月日、項目、受講者氏名を記録し、閉鎖後5年間保存
* 省略した場合は、理由を記録

まとめ

放射線業務従事者は、放射線を安全に取り扱うために、法令を遵守し、適切な教育・訓練を受け、健康診断を定期的に受ける必要があります。これらの措置は、放射線による健康被害を防ぐために非常に重要です。

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