放置違反金

放置違反金とは

放置違反金とは、道路交通法に基づき、放置駐車違反に対して課される行政制裁金の一種です。2006年6月の道路交通法改正により導入され、車両の使用者責任を強化する目的で設けられました。従来の駐車違反取締りは運転者に対して行われていましたが、放置違反金は、運転者が特定できない場合に、車両の使用者（車検証上の登録者）に納付が命じられます。

放置違反金の対象者

放置違反金の納付義務者は、違反車両が社用車であれば法人、レンタカーであればレンタカー会社となります。また、自家用車などを家族や友人に貸し、その運転者が放置駐車違反をした場合、通常は貸した本人である車両登録上の使用者が納付義務者となります。

放置違反金と反則金

駐車違反の取り締まりでは、運転者には反則金が、車両使用者には放置違反金が課されます。両者の金額は同額で、どちらか一方を納付すれば、その駐車違反に対する責任追及の手続きは終了します。なお、自動二輪車、原動機付自転車、特定小型原動機付自転車も対象ですが、軽車両や自転車は対象外です。

放置違反金制度の概要

車両の使用者には、従来から運転者に法令を遵守させ、適切な駐車場所を確保する努力義務が課されていました。改正後は、より義務が強化され、車両の適切な使用のために必要な措置を講じることが求められるようになりました。具体的には、運行前に目的地や経路を確認し、駐車場所を確保することや、違反をする恐れのある運転者に車両の使用を認めないといった措置が考えられます。

放置駐車違反の取り締まりは、警察官や交通巡視員の他、2006年6月からは民間法人（放置車両確認機関）の駐車監視員も行っています。

罰金や交通反則金は国の歳入となりますが、放置違反金は都道府県の歳入となります。

放置違反金の額

放置違反金の額は、その原因となった違法駐車行為をした者が納付すべき反則金の額と同額です。放置駐車違反の責任は、本来は運転者が負うべきですが、運転手が不明の場合や、反則金を納付しない場合には、使用者責任が追及されます。

放置違反金の督促と滞納処分

納付命令を受けた者が期限内に納付しない場合、督促状が送付されます。それでも納付しない場合は、地方税の滞納処分の例により強制的に徴収されることがあります。滞納期限によっては延滞金が加算される場合もあります。

車検拒否制度

車検対象の車両の場合、放置違反金を滞納していると、車検時に納付を証明する書面を提示しなければ車検を受けることができません。

車両の使用制限命令制度

公安委員会は、放置違反金の納付命令を受けた車両の使用者が、過去6ヶ月以内に同様の命令を一定回数受けている場合、3ヶ月以内の期間を定めて車両の運転や使用を禁止することができます。

違反金の返金

仮納付後に、弁明や審査請求が認められた場合や、運転者が反則金を納付した場合、違反金は全額返金されます。返金は指定した銀行口座に振り込まれます。

放置違反金の制裁措置の限界

放置違反金制度には、車検拒否や預貯金差し押さえといった制裁措置がありますが、限界も指摘されています。車検拒否は、車を譲渡したり、廃車してしまったりした場合、効果がない場合があります。また、250cc以下のオートバイには車検制度がないため、車検拒否処分もありません。

預貯金差し押さえも、財産調査のコストがかかる、無資力者の場合は実効性に欠けるなど、課題があります。さらに、駐車違反で検挙されても、反則金ではなく放置違反金を納付することで、運転免許証の行政処分や違反点数の加点を免れる「逃げ得」ともいえる状況も生まれています。これは、反則金と放置違反金のどちらか一方を納付すれば責任追及が終了するため、運転者と車両登録上の使用者が同一の場合は納付する方を選択できるためです。実際、違反者の出頭率は制度導入後に大きく低下しており、大半が放置違反金の納付を選択していると考えられます。

レンタカーの場合、放置違反金はレンタカー会社に請求されるため、レンタカー会社が不服を申し立てた事例もありますが、裁判所は放置違反金の請求を認めています。レンタカー会社では、業界団体で情報共有し、反則金未払いの場合は貸し出しを拒否するなどの対策を講じています。

放置違反金と交通反則金の法的性格の相違

交通反則金は、納付すれば刑事手続きがされないという性質から、行政不服審査の対象になりません。一方、放置違反金は納付を義務付ける行政処分であるため、審査請求や行政訴訟が可能です。ただし、争わない場合は強制的に徴収されます。

運転者不明の場合でも、違反者として出頭すれば、通常の交通違反として処理することも可能です。この場合、反則金は放置違反金と同額ですが、運転免許証の違反点数が加点されます。

関連情報

• - 行政不服審査法
• - 道路交通法
• - 交通反則通告制度

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