滞納処分

滞納処分とは

滞納処分とは、国や地方公共団体が、税金や社会保険料などの公的な債務が期限までに納付されない場合に、滞納者の意思に関わらず強制的に徴収する行政処分です。この処分は、税の公平性を保ち、国の財政を維持するために重要な役割を果たしています。

滞納処分の目的

滞納処分の目的は、滞納された税金等を強制的に徴収し、最終的には税金が納付されたのと同様の効果を得ることです。具体的には、納付されるべき税額を国庫に納めさせることにあります。税の徴収は、国や地方公共団体の活動の基盤であり、その徴収には大量性・反復性があります。そのため、私的な債権回収とは異なり、自力執行権という強力な権限が認められています。これは、債権者自らが強制力を行使して債権を実現できる権利です。

滞納処分の流れ

滞納処分は、以下の手順で進められます。

1. 督促: 税金が納期限までに納付されない場合、まず督促状が送付されます。これは、滞納者に対して納付を促す最初のステップです。
2. 財産調査: 滞納者が納付に応じない場合、税務署職員は滞納者の財産を調査します。この調査では、預金口座、不[[動産]]、動産、債権などが対象となります。
3. 差押: 調査の結果、差押え可能な財産が見つかると、その財産が差し押さえられます。これにより、滞納者は財産を自由に処分することができなくなります。
4. 換価: 差し押さえられた財産は、公売や随意契約によって金銭に換価されます。この手続きによって得られた金銭は、滞納された税金に充てられます。
5. 配当: 換価された金銭は、法令で定められた順位に従って、税金やその他の債権者に配当されます。

滞納処分における自力執行権

税の徴収においては、私債権の実現には許されない自力執行権が認められています。これは、税の徴収には、国や地方公共団体の財政基盤を維持するという公共性が求められるためです。自力執行権によって、税務署は裁判所の判決を経ずに、滞納者の財産を差し押さえ、換価することができます。

他の法律における「国税徴収の例による」場合

国税徴収法に規定されている滞納処分の手続きは、国税に関するものですが、他の法律でも「国税徴収の例による」と規定されている場合があります。例えば、関税、健康保険料、国民年金保険料、地方税、地方自治体の徴収金などが該当します。この場合、国税徴収法の規定が準用され、徴収職員、国税などの文言が、それぞれの法令に合わせた用語に読み替えられます。

滞納処分の詳細な手続き

督促

税金が納期限までに納付されない場合、税務署は原則として納期限から50日以内に督促状を発送します。督促状が発送されてから10日以内に納付されない場合、滞納処分が開始される可能性があります。ただし、一定の条件を満たす場合には、督促状の発送を省略して、直ちに滞納処分が行われることもあります。

財産調査

差押えに先立ち、税務署職員は滞納者の財産を調査します。この調査は、任意調査と強制調査に分けられます。任意調査では、滞納者に質問したり、帳簿の提示を求めたりします。強制調査では、捜索を行うこともあります。財産調査の際には、税務署職員は身分証明書を携帯し、関係者の求めに応じて提示する必要があります。

質問・検査

税務署職員は、滞納者や、滞納者の財産を保有していると疑われる者に対して、質問や検査を行うことができます。質問に対して虚偽の答弁をしたり、検査を拒否したりすると、罰則が科せられる場合があります。

捜索

強制的な財産調査として、滞納者の自宅や事業所を捜索することができます。捜索は、裁判所の令状に基づいて行われます。

財産の差押

差押えは、滞納者の特定の財産を処分できないようにする強制処分です。差押えの対象となる財産は、現金、預貯金、不[[動産]]、動産、債権、無体財産権など多岐にわたります。差し押さえられた財産は、原則として滞納者による処分が制限されますが、所有権は滞納者のままです。

動産の差押

動産の差押えは、税務署職員が当該動産を占有することで行われます。ただし、必要に応じて滞納者に保管を命じることもできます。金銭や有価証券を差し押さえた場合は、その金額を国税として徴収したものとみなされます。

債権の差押

滞納者が有する債権の差押えは、債務者に対して差押通知書を送達することで行われます。これにより、債務者は滞納者に債務を支払うことができなくなります。差し押さえられた債権は、税務署が直接取り立てます。

不[[動産]]の差押

不[[動産]]の差押えは、税務署が差押書を滞納者に送達し、登記を行うことで効力が生じます。これにより、滞納者は不[[動産]]を自由に処分することができなくなります。

無体財産権の差押

特許権や著作権などの無体財産権も、差押えの対象となります。これらの差押えは、差押書を滞納者に送達することで行われ、権利移転には登記が必要となる場合があります。

差押の解除

差押えは、滞納された税金が完納された場合や、差押財産の価値が税額を上回る見込みがない場合など、一定の条件を満たすと解除されます。

交付要求・参加差押

滞納者の財産が他の債権者によって差し押さえられている場合、税務署は交付要求や参加差押を行うことで、滞納された税金の回収を図ることができます。交付要求は、裁判所の強制執行手続きに参加して行われ、参加差押は、他の税務署による差押え手続きに参加して行われます。

財産の換価

差し押さえられた財産は、公売や随意契約によって金銭に換価されます。公売は、一般競争入札やせり売りによって行われます。滞納者や税務署の職員は、換価対象の財産を買い受けることはできません。

公売

公売は、税務署が財産を売却する手続きです。公売は、入札またはせり売りの方法で行われます。公売に参加するには、保証金を納める必要があります。

売却決定から権利の移転まで

最高価額を提示した人が落札者となり、売却決定が行われます。落札者は、代金を支払うことで財産の所有権を取得します。

随意契約による売却および国による買入

公売に不適当な場合や、公売で買い手がつかなかった場合、税務署は随意契約によって財産を売却することができます。また、公売で買い手がつかなかった場合には、国が買い取ることもできます。

換価代金等の配当

換価によって得られた金銭は、滞納された税金やその他の債権者に配当されます。配当の順位は、法令で定められています。

近年の傾向

近年では、インターネットを活用した公売（官公庁オークション）が増加しています。これにより、より多くの人が公売に参加できるようになり、換価の効率化が図られています。