放送音楽協会

放送音楽協会（BMI、Broadcast Music, Inc.）は、アメリカ合衆国における主要な音楽著作権の演奏権管理団体の一つです。米国作曲家作詞家出版者協会（ASCAP）などと並び称され、ソングライターや作曲家、音楽出版社といった権利者に代わって、楽曲が公の場で演奏されることに対する許諾業務を行い、その対価として著作権使用料を徴収します。集められた使用料は、公正なシステムを通じて権利者へと分配され、彼らの創作活動を経済的に支える役割を担っています。BMIは非営利団体として、アメリカ音楽界の発展と多様性を支える重要な基盤となっています。

BMIの大きな特徴は、その設立背景からくるジャンルやアーティストの多様性にあります。主流のポップスやカントリーから、ヘヴィメタルの一形態であるデスメタルまで、あらゆる音楽スタイルに関わる才能が所属しています。例えば、マライア・キャリー、レディー・ガガ、テイラー・スウィフトといった現代のスター、マルーン5、リンキン・パークなどの人気バンド、サム・クック、ドリー・パートンといった伝説的なミュージシャン、さらにはジョン・ウィリアムズのような映画音楽の巨匠、シャーマン兄弟のようなミュージカル作家まで、幅広い分野の権利者がBMIに管理を委託しています。この広範な網羅性が、BMIのアメリカ音楽史における影響力を高めています。

BMIの誕生は、1930年代後半、ラジオ放送の台頭が音楽産業に大きな変化をもたらしていた時期に遡ります。当時、長年にわたり演奏権管理を担っていたASCAPは、ラジオ局に収益に応じた高額な包括的ライセンス料を要求しており、1939年にその料率を大幅に引き上げました。これに対し、全米放送事業者協会（NAB）は対抗し、より安価で柔軟なライセンスを提供できる新たな団体として、1939年にBMIを設立。これにより、演奏権管理市場に競争が生まれ、音楽利用者に選択肢が提供されることになりました。1941年には多くのラジオ局がASCAPとの契約を打ち切り、BMIの楽曲利用に切り替えました。BMIは司法省との合意に基づき、包括的ライセンスに加え楽曲ごとの支払いも認めるなど、業務慣行の一部を変更しました。設立当初、BMIは既存のASCAPに対抗するため、当時ASCAPがあまり扱っていなかった多様なジャンルやアーティストに積極的に働きかけました。特に、ブルース、ジャズ、リズム・アンド・ブルース、ゴスペルといったアフリカ系アメリカ人の音楽や、カントリー、フォーク、ラテン、そして後のロックンロールなど、新しい、あるいはマイノリティと見なされていた音楽分野のアーティストを積極的に受け入れました。実演回数に基づいた公平な印税支払いを導入し、権利者の支持を獲得。こうした戦略により、BMIは多様なアメリカ音楽の発展に貢献し、特に1940年代から50年代にかけてはカントリーやR&B分野で主要な存在となりました。クラシック音楽分野にも進出し、ピューリッツァー賞音楽部門の受賞者を多数輩出するなど、幅広い音楽領域で重要な役割を担っています。

BMIは、テレビ、ラジオ、インターネットメディア、衛星ラジオといった放送・通信分野に加え、ナイトクラブ、レストラン、ホテル、オーケストラ、ライブ会場など、楽曲が公に演奏されるあらゆる場所に対してライセンスを供与しています。現在、750万曲以上の楽曲の実演権を管理し、登録する50万人以上の権利者（ソングライター、作曲家、音楽出版社）に著作権使用料として分配しています。アメリカ国外のアーティストがアメリカ国内で楽曲を利用される際の管理も行っています。ニューヨーク、ロサンゼルス、ナッシュビルなどのアメリカ国内主要拠点に加え、ロンドンにも事務所を設置し、グローバルに活動しています。

BMIは、音楽界の才能を称える活動として、毎年BMI賞を主催しています。これは、その年に最も公の場で演奏された楽曲の権利者を表彰するもので、ポップ、カントリー、ラテン、映画/テレビなど多様なジャンルが対象です。ゴスペル音楽分野では、長年の貢献者を称えるイベントも実施しています。また、音楽著作権保護に関連する政策提言にも関与しています。

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