政治的暴力行為防止法案

政治的暴力行為防止法案とは

政治的暴力行為防止法案（政防法案）は、1961年5月13日に衆議院に提出された、テロ行為を防止するための法案です。浅沼稲次郎暗殺事件や嶋中事件といった右翼テロが相次いだことを背景に、自由民主党が議員立法として提出しました。

法案の内容

この法案は、政治的暴力行為が団体活動として行われる場合に、刑罰規定や団体規制を適用することを規定しています。具体的には、政治的暴力行為を「政治上の主義を推進する目的で、殺人、傷害、逮捕監禁、強要、集団暴行、脅迫、器物損壊、政府中枢施設への不法侵入による暴行、殺人予備を予見される者に対する殺害の正当性を主張する行為」と定義しています。

また、政治的暴力団体が継続的または反復して政治的暴力行為を行い、将来も同様の行為を行う明白な恐れがある場合、4ヶ月以内（殺人の場合は6ヶ月以内）に限定して、デモ活動や機関紙誌の発行を禁止する団体規制を可能としました。さらに、殺人を犯した政治的暴力団体が、将来も同様の殺人を繰り返す明白な恐れがある場合は、団体解散を可能とする規定も設けられました。

これらの団体規制に関する調査権限は公安調査庁に、規制処分権限は公安審査委員会にあると規定されています。

法案を巡る対立

日本社会党は、団体規制に強く反対し、個人を処罰する規定のみとすべきだと主張しました。社会党は対案を提出しましたが、自民党案との溝は埋まりませんでした。左派の間では、「第二破防法」などと批判的な声が上がり、国会周辺では3万人の反対デモが行われました。

この法案は、池田内閣の「低姿勢」に批判的な自民党内の反主流派勢力が導入に積極的でした。彼らは池田の師匠である吉田茂や野党民社党を巻き込み、池田に圧力をかけました。池田周辺では消極論も強かったものの、池田自身は強硬策を指示しました。1961年6月3日、自民・民社両党は衆議院で強行採決し可決しましたが、国会は混乱しました。

6月8日には、久保田鶴松副議長が法案審議への不協力を理由に、与党自民党から不信任決議案を提出され、可決、即日辞任しました。しかし、参議院では松野鶴平議長のあっせんで採決されず、継続審議となり、最終的に廃案となりました。

関連情報

この法案に関連する書籍として、公安調査庁が発行した『政治的暴力行為防止法案について―立案の理由及び審議の経過』（1979年）があります。

また、関連項目として、暗殺、破壊活動防止法、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律などが挙げられます。

政治的暴力行為防止法案は、当時の政治情勢や社会状況を反映した法案であり、その成立過程は現代の政治を考える上でも重要な示唆を与えてくれます。

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