強行採決

強行採決とは

強行採決とは、国会などの議会において、与党が野党の合意を得ずに、多数の議席を利用して採決を行うことを指す、日本のマスコミ用語です。これは、与党単独採決とも呼ばれます。

概要

この言葉は、1955年体制下で自民党が衆参両院で単独過半数を占めていた時代に生まれました。当時、自民党は野党への配慮から、対立法案以外は全会一致での可決を目指していました。そのため、与党単独での採決は珍しく、「強行採決」という言葉が生まれました。

政治評論家の有馬晴海氏によると、1990年代以降、野党が選挙で自民党に勝つ可能性が出てきたため、「牛歩戦術で議会を妨害するくらいなら選挙で勝て」という風潮になり、牛歩戦術は時代遅れになったと指摘しています。日本維新の会の馬場伸幸代表は、立憲民主党が野党第一党となっても、与党が事前に強行採決を行うことを野党に伝え、野党は可決させる代わりにパフォーマンスを行うという慣習が続いていると述べています。

「採決強行」との違い

「強行採決」は全野党が反対する状況下での与党単独採決を指しますが、「採決強行」は、法案に反対する勢力が、与党が野党第一党からの賛成を得ている場合などにも使われることがあります。

日本における強行採決

現代の「強行採決」は、戦前の帝国議会時代から存在していました。ただし、当時は本会議中心の運営だったため、採決は本会議で行われることがほとんどでした。戦後は委員会中心主義に変わり、委員会と本会議で採決を行う仕組みに変わりました。質疑数に法的規定がないため、与野党の合意が必要となり、合意が得られない場合は与党単独採決が発生します。

戦後の与党単独過半数と野党への配慮

戦後の国会では、多数派による議事運営が規定されており、自民党が長らく政権を維持し、衆参両院で単独過半数を占めていました。しかし、自民党は野党に配慮し、法案採決において何らかの形で野党の合意を取り付けることを慣例としていました。そのため、対立法案での与党単独採決は珍しく、「強行採決」と呼ばれるようになりました。

国対政治以後のパフォーマンス化

戦後の国会では、野党がマスコミに「与党独裁」への対決姿勢を見せることで、次の選挙で与党を不利にさせるというパフォーマンスが行われてきました。与党側は、野党に「見せ場」を与えないために、一定の妥協を引き出させようとします。

国対政治・廃止と復活

議事日程は議案ごとに議院運営委員会で調整され、これが政治上の駆け引きの材料となってきました。しかし、与野党が合意に至らない場合は、与党が単独で採決日を決めることが検討されます。かつては、与党が野党に花を持たせる国会運営が行われていましたが、「不透明な国対政治の一掃」が主張され、一時廃止されました。しかし、審議日程が行き詰まるなどの実害が生じたため、復活しました。

民主党への政権交代以降

2009年の政権交代後、民主党も強行採決を行うようになり、批判が起きました。産経新聞によると、民主党政権下では3年3カ月で24回の強行採決が行われました。一方、安倍政権下では6年4カ月で27回でした。

語源など

「強行」という言葉は、与党が野党の合意を得ないまま審議を終了させ、法案を採決することをマスコミや野党が表現したのが始まりです。また、与党が一方的に審議を打ち切ることから、「与党による審議拒否」というレトリックが用いられることもあります。

評価

法的には、衆参議会の過半数を与党が獲得している場合、問題は生じません。選挙上の影響としては、世論の変化に一定の影響を及ぼすことがあります。判例でも、強行採決による立法過程が法律の効力に影響を与えることはないとされています。

背景

日本で強行採決が注目される理由としては、与党が野党に配慮すること、ねじれ国会となることが少ないこと、野党議員のパフォーマンスの場となっていることなどが挙げられます。また、日本の委員会審査が一問一答方式で終わりのない過程であることも影響しています。

海外の状況

多くの西側民主主義国の議会では、与党が多数派を握っている場合、野党の反対を無視して可決することが普通です。そのため、日本のように「強行採決」が注目されることはありません。

まとめ

強行採決は、日本の国会における独特の現象であり、与野党の駆け引きや政治的な背景が複雑に絡み合っています。その評価は、法的な側面、選挙への影響、世論の動向など、多角的な視点から行われる必要があります。

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