故郷のように

故郷のように

「故郷のように」（ふるさとのように）は、昭和を代表する女性歌手の一人、西田佐知子が1963年（昭和38年）3月に発表したシングルレコードです。発売元はポリドール・レコード（現在のユニバーサルミュージック）で、品番はDJ-1322が付与されました。

楽曲誕生の背景

この楽曲は、黎明期の日本のテレビ放送を彩ったNHK総合テレビジョンの人気バラエティ番組『夢であいましょう』の中から生まれました。番組内の名物コーナーであった「今月のうた」として紹介された楽曲の一つであり、「故郷のように」は特に1962年（昭和37年）12月の歌として披露されました。

『夢であいましょう』の「今月のうた」コーナーは、毎回異なるテーマで新しい楽曲を生み出し、多くの才能ある作詞家、作曲家、そして歌手たちが参加しました。このコーナーから生まれた楽曲は、時に番組を飛び越えて広く親しまれ、日本の歌謡界に大きな影響を与えました。「故郷のように」も、そうした番組発ヒット曲の流れの中で誕生した作品と言えます。

制作スタッフと演奏

「故郷のように」の作詞は、戦後日本の文化・芸能界を牽引した多才な作詞家、永六輔が手掛けました。そして、メロディーラインと編曲は、永六輔とのコンビで数々の名曲を生み出した作曲家、中村八大が担当しています。この永六輔・中村八大コンビは、『夢であいましょう』を舞台に「上を向いて歩こう」「遠くへ行きたい」など、日本人の心に深く刻まれる多くの楽曲を発表しており、「故郷のように」も彼らの共同作業から生まれた秀作の一つです。

また、この楽曲の演奏は、ジャズオーケストラの分野で著名な宮間利之率いる宮間利之とニューハードが担当しました。彼らの洗練された演奏が、楽曲の持つ独特の雰囲気を一層引き立てています。

シングル盤の構成

シングルレコードの表題曲（A面）として「故郷のように」が収録されています。そして、カップリング曲（B面）には「どうなるの？」が収められました。どちらの楽曲も作詞は永六輔、作編曲は中村八大が手掛けており、永六輔・中村八大の世界観が両面に表れています。

後世への収録と評価

「故郷のように」は、発表から長い年月を経ても、西田佐知子の代表的なレパートリーの一つとして認識されています。そのため、後年に発売された彼女のベストアルバムやコンピレーションアルバムに多数収録されています。

以下に主な収録アルバムの一部を挙げます。

GOLDEN☆BEST 西田佐知子（2003年：UICZ-6041）
ベストヒット&カラオケ 西田佐知子（2006年：UPCY-6167）
西田佐知子 魅惑のヒット集ベリーベスト（2006年：EJS-5）
西田佐知子歌謡大全集（2007年：UPCY-9096/100）
西田佐知子 エッセンシャル・ベスト（2007年：UPCY-9137）
初めての街で 〜西田佐知子ベストセレクション〜（2009年：UPCY-6543）

これらの多数の収録は、この楽曲が単なる一過性のテレビソングではなく、西田佐知子のキャリアにおいて重要な位置を占め、時代を超えて多くの音楽ファンに親しまれている証拠と言えるでしょう。

1963年という時代の音楽シーンの中に位置づけられるこの「故郷のように」は、テレビ番組というメディアが楽曲制作と普及に深く関わっていた時代の特徴を示す一例であり、永六輔、中村八大、そして西田佐知子という才能の連携が生んだ、日本の歌謡史に残る一曲と言えます。

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