救世軍士官学校

救世軍士官学校（きゅうせいぐんしかんがっこう）

救世軍士官学校は、東京都杉並区和田に位置する、救世軍に属する士官（聖職者）を育成するための教育機関です。救世軍では士官が各地で伝道や社会福祉活動を展開しており、その任務を担う人材を育成するために設けられています。

概要

本校は全寮制を採用しており、士官候補生は約2年間の集中的な訓練を受けます。この期間を経て卒業した者は、救世軍の中尉に任官されることになります。

入学資格としては、原則として18歳から48歳までの者で、救世軍士官として奉仕する明確な「召命」の確信を持つことが求められます。また、所属する救世軍の小隊長、あるいは一般の教会に所属している場合はその牧師からの推薦が必要となります。ただし、救世軍以外の教会員が出願する際には、入学までに救世軍に転会し、将来にわたって救世軍の士官として働き続ける強い意志があることが条件となります。救世軍には士官は原則として士官同士で結婚するという規律があるため、すでに結婚している志願者は夫婦で共に志願する必要があるという特徴的な規定も存在します。

教育内容も多岐にわたります。一般的な神学校で行われる神学教育に加えて、救世軍が重視する社会福祉に関する学習に多くの時間が割かれます。さらに、宣教や社会活動に役立つ実習として、英会話、ブラスバンド、タンバリン演奏などの訓練も行われます。特にユニークな活動として、「ときのこえ発射」と呼ばれる機関紙「ときのこえ」の戸別訪問販売活動が訓練の一環として組み込まれています。これは、伝道や地域との関わりを学ぶ重要な機会と位置付けられています。

沿革

日本の救世軍における士官教育の歴史は、1895年（明治28年）にエドワード・ライト大佐らによって日本での活動が開始された直後から始まります。当初は定まった校舎を持たず行われていましたが、1906年（明治39年）には市谷に専用校舎が新築され、その後に渋谷へ移転しました。日本人として初めて校長の任に就いたのは、1919年（大正8年）に就任した矢吹幸太郎少佐です。

第二次世界大戦が始まる前の1940年（昭和15年）、戦時体制下で官憲からの弾圧を受けた救世軍は、「日本救世団」への改称を余儀なくされました。これに伴い、士官学校も「救世学院」、さらに「東光学院」と名称を変遷させましたが、最終的には1943年（昭和18年）に日本東部神学校へ統合される形で廃校となりました。

終戦後、日本の救世軍は比較的早期に活動を再開しました。それに伴い士官学校も再建され、1947年（昭和22年）には戦後第一期の開校と士官候補生を迎える歓迎会が盛大に行われました。教育内容の充実を図るため、1961年（昭和36年）にはそれまで1年間だった訓練期間を2年間に延長し、各地の救世軍施設（小隊）での実践的な実地訓練の機会を増やしました。

現在の校舎は、1963年（昭和38年）に渋谷から杉並区和田の現在地に移転した際に建設されたものです。移転後の献堂式には、東京都知事の代理や津田塾大学学長を務めていた藤田たき氏から祝辞が寄せられるなど、各方面からの期待が寄せられました。しかし、1980年代以降、志願者がゼロとなる年が複数発生するなど、次世代を担う士官の養成は救世軍にとって深刻な課題となっています。

著名な出身者

救世軍士官学校からは、救世軍の働きに貢献した多くの人材が輩出されています。その一人に、俳人としても知られる石島雉子郎がおり、彼は後に救世軍大佐にまで昇任しました。

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