教育科学研究会

教育科学研究会（教科研）

概要

教育科学研究会（きょういくかがくけんきゅうかい）は、略称を「教科研（きょうかせん）」とし、日本における代表的な民間教育研究団体の一つとして知られています。教育の現場で活動する実践家と、学術的な視点から教育を探究する研究者が協力し、教育に関する諸問題について深く議論し、研究を進めています。

設立から戦時中の活動

この団体は、1937年5月に産声を上げました。当時の社会情勢のもと、教育のあり方について学問的に追求することを目指して設立されました。しかし、時代は戦時体制へと傾斜し、特に翼賛政治体制下においては自由な学術活動が困難となりました。その影響を受け、教科研は1941年4月、活動を停止せざるを得ず、事実上解散となりました。わずか数年という短い期間ではありましたが、戦前の教育科学研究の一翼を担いました。

戦後の再建と発展

第二次世界大戦後、日本の民主化が進む中で、教育の再構築が求められました。こうした社会情勢を背景に、教科研も再建の道を歩み始めます。1951年には、団体の思想や研究成果を発信する機関誌『教育』が復刊されました。これは戦前の機関誌とは異なりますが、団体の精神を受け継ぐものとなりました。そして、1952年3月27日および28日に開催された大会において、正式に団体として再建されることが決議されました。同年6月10日には、団体の今後の活動方針を示す運動綱領が定められ、再出発の礎が築かれました。

再建後、教科研は教育現場の課題と向き合いながら、教育科学の発展に寄与する活動を精力的に展開していきます。現在も、教育に関する様々な分野を専門とする多数の分科会が活動しており、各分科会では特定のテーマに絞った研究や議論が行われています。また、毎年夏には全国規模の教育研究集会が開催され、全国各地から多くの教育関係者が集まります。この集会は、日頃の研究成果を発表し合い、教育実践の知恵を共有し、新たな知見を得るための重要な機会となっています。実践と理論が結びついた研究活動を通じて、日本の教育の質の向上に貢献し続けています。

機関誌

教科研は、その研究成果や主張を広く社会に発信するために、機関誌を発行してきました。

戦前:
『敎育科學研究』: 1939年9月に創刊され、1941年4月に団体の解散と共に終刊しました。

戦後:
『教育』: 1951年11月に復刊された月刊誌です。復刊当初は国土社から発行されていましたが、2012年4月からはかもがわ出版、そして2020年4月からは旬報社へと発行元が変わっています。この雑誌は、現在の教科研の機関誌として、教育問題に関する最新の研究成果や実践報告、論考などを掲載し、教育界に大きな影響を与えています。

主な構成員と研究分野

教科研の活動は、教育現場の教師や学校関係者といった実践家と、大学などの研究機関に所属する研究者との協力によって成り立っています。両者が互いの視点や知見を共有することで、より現実的かつ理論的に深められた教育研究が可能となっています。

関連する研究分野としては、教育課程の編成や内容に関する「カリキュラム論」、授業で使用する教材の選定や開発、活用法を探る「教材論」などが挙げられます。これらの分野における研究は、教科研の活動の中心の一つであり、日本の教育内容や方法論の進歩に貢献しています。また、「教育科学研究会・国語部会」のような専門部会が存在することからも、具体的な教科教育における研究にも力を入れていることがうかがえます。

まとめ

教育科学研究会（教科研）は、戦前からの歴史を持つ民間の教育研究団体として、教育実践と教育科学の融合を目指し活動しています。戦時中の解散という困難を乗り越え、戦後再建されて以降、機関誌の発行や全国研究集会の開催などを通じて、日本の教育界における重要な役割を果たしています。教育を巡る今日の様々な課題に対しても、現場の視点と学術的な知見を結びつけながら、その解決に向けた探究を続けている団体です。

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