散曲

散曲（さんきょく）は、中国の元・明・清代に隆盛した口語による韻文形式、または歌謡文芸の一種です。字句や文法に口語を取り入れた比較的新しい文芸であり、当時の社会情勢や人々の生活感情を反映した作品が多く見られます。

散曲は大きく分けて「散套」（さんとう）と「小令」（しょうれい）の2種類が存在します。

散套（さんとう）: 散曲套数の略称で、単に套数とも呼ばれます。同一の宮調（音楽の調）を用いて構成された組歌形式であり、各楽曲の長短は不揃いです。押韻は一韻到底、つまり最初から最後まで同じ韻を踏むことが特徴です。散套は、内容や形式において雑劇（歌劇の一種）の歌詞と共通する部分が多く、作家が重複することも珍しくありませんでした。

小令（しょうれい）: 短く独立した楽曲であり、詞の小令とは異なります。小令は単独で存在し、短い物語や情景を描写するのに適しています。また、小令には2つ、3つの曲調で構成される「帯過曲」と呼ばれる形式があり、これは小令の一種として分類されます。

散曲は、雑劇と共に元代に大きく発展し、これらを総称して「元曲」と呼びます。元曲は、当時の社会や文化を反映した重要な文芸作品群であり、後世の文学や演劇に大きな影響を与えました。

散曲の代表的な作家と作品としては、以下のようなものが挙げられます。

馬致遠: 「借馬」
姚守中: 「牛訴冤」
睢景臣: 「高祖還郷」
劉致: 「上高監司」

これらの作品は、当時の社会風刺や人々の生活を描写しており、現代においても高い評価を受けています。また、多くの場合、散曲の作家は雑劇の作家と共通していますが、張可久や貫雲石のように散曲のみを手がけた作家も存在します。

散曲は、その口語的な表現と自由な形式によって、当時の社会や文化を生き生きと描き出した文芸作品であり、中国文学史において重要な位置を占めています。

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