元曲

元曲：元代の文学を彩る歌劇

元曲とは、宋の時代に端を発し、元代に大きく発展した歌劇の総称です。具体的には、雑劇と散曲という二つの形式を含みます。これらの形式は、当時北方で流行していた音楽（北曲）を使用していた点が特徴です。

元代には、雑劇と散曲の両分野において、数多くの優れた作家や作品が登場しました。その文学的な価値は非常に高く、漢文、唐詩、宋詞と並び、「元曲」として、元代の文学を代表するものとして高く評価されています。特に、雑劇においては傑出した作品が多く、元雑劇（元人雑劇）は雑劇の代表的な存在として知られています。

元雑劇の特徴

元雑劇は、「折」と呼ばれる幕によって構成されています。通常、一つの劇は四つの折で構成されることが一般的です（まれに五折、ごく例外的に六折の作品も存在します）。また、「楔子（せっし）」と呼ばれる、現代演劇でいうところの序章に相当する部分が付加されることもあります。

一つの折の中では、同じ調の曲が用いられ、その順序にも一定の傾向が見られます。例えば、第一折は原則として仙呂・点絳唇で始まる、といったルールが存在します。さらに、一つの折を通して同じ韻を踏む必要がありました。

劇に登場する人物は、「末」（男性、正末・沖末などに分かれる）、「浄」（男性の乱暴者や悪役）、「旦」（女性）、「丑」（道化）、「外」（老人）など、役割に応じて様々な種類が存在します。原則として、歌を歌うのは一人のみとされています。

劇の題材は、古くから語り継がれてきた有名な物語から採用されることが多くありました。しかし、多くの場合、原作からストーリーが大幅に変更されています。また、語り物や歌い物を演劇として再構成した作品も多く見られます。

ほとんどの劇はハッピーエンドで幕を閉じますが、『竇娥冤』や『漢宮秋』など、例外的に悲劇として終わる作品も存在します。

雑劇は、明代以降も創作されましたが、次第に南曲が主流となり、雑劇は上演される演劇から、読まれる演劇へと変化していきました。

元代のオリジナルのテキストがそのまま残っている例は少なく、現存する雑劇のほとんどは明代に修正が加えられています。元雑劇の選集として特に有名なのは、17世紀初頭に臧懋循によって編纂された『元曲選』（元人百種曲）です。この選集は、『西廂記』以外の代表的な作品を収録しており、芸術性が高く、読みやすく整理されています。しかし、他のテキストとは文章が異なっていることが多く、元時代のオリジナルからは変化していると考えられています。

平仄と押韻

詞と同様に、元曲は各句の長さが異なり、字数、平仄、および押韻の位置は曲牌によって定められています。詞との違いは、曲牌で指定された以外の言葉（襯字）が多数使用されること、そして平仄だけでなく上声・去声のどちらを使用するかを指定している箇所があることです。後者は旋律と関係があり、一般的に旋律が上昇する場合は上声、下降する場合は去声が要求されます。

元曲で使用される韻（曲韻）は詩韻とは異なり、当時の北方方言の発音で押韻されています。周徳清は当時の北曲に基づき、『中原音韻』という韻書を作成しました。この書は19韻からなり、入声は音韻変化により消滅したことを受けて、他の平・上・去声に分けて入れられました。

曲韻では声調の違いにかかわらず通韻するため、上声・去声に韻目は建てられていません。

元曲四大家

元曲の四大家として、以下の人物が挙げられます。

関漢卿 - 『竇娥冤』『拝月亭』『救風塵』『望江亭』『単刀会』
馬致遠 - 『漢宮秋』『任風子』『青衫涙』
白仁甫 - 『梧桐雨』『牆頭馬上』
鄭光祖 - 『倩女離魂』『王粲登楼』

上記四人に、王実甫（『西廂記』）、喬吉（『金銭記』）を加えた六人を、元曲の六大家とすることもあります。

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