散茶女郎

散茶女郎とは

散茶女郎（さんちゃじょろう）は、江戸時代の吉原において、遊女の階級の一つでした。太夫や格子女郎に次ぐ階級に位置し、揚屋には入らず、遊郭の二階で客を取るのが特徴でした。この階級は、時代とともに変化し、後に「昼三（ひるさん）」と呼ばれるようになります。

散茶女郎の由来

「散茶」とは、抹茶のように茶葉を粉にしたものを指します。当時、お茶は茶葉を袋に入れて湯の中で振って抽出していましたが、散茶はそのまま湯を注ぐだけで飲めるため、「袋を振る必要がない＝客を断らない」という意味で、「散茶女郎」と呼ばれるようになりました。

散茶女郎の階級と料金

散茶女郎は、太夫、格子女郎に次ぐ階級で、その下の階級には埋め茶女郎がいました。当時の遊女の料金は、太夫が37匁（3.7両）、格子が26匁（2.6両）であったのに対し、散茶女郎は1歩（0.25両）でした。これは昼のみの料金で、他の遊女に比べて比較的安価でした。

資料に見る散茶女郎

「洞房語園」には、格子は太夫に次ぐ位で、格子のある部屋で客を取る局女郎より格式が高いと記されています。また、散茶女郎は寛文年間に登場し、当初は局女郎と同等の料金でしたが、後に料金が上昇したとあります。貞享の「江戸土産咄」には、太夫や格子に及ばない客は、散茶女郎の二階座敷で楽しんだと記されています。

「傾城色三味線」は、「散茶とはふらぬといふ心なり」と注釈しており、茶を立てる行為を「振る」と表現することから、散茶は「振らない＝客を断らない」という意味であると解釈できます。

散茶女郎の変遷と昼三

寛文5年に岡から来た遊女は、客を断ることはなく、その様子から「散茶女郎」と呼ばれるようになったという説もあります。その後、宝暦の頃から、散茶女郎は昼夜で3分（0.75両）の料金となり、「昼三」と呼ばれるようになりました。散茶という名称は次第に使われなくなり、昼三がそれに代わりました。明和5年の「古今吉原大全」には、「散茶は今の昼三のことなり」と記されていますが、吉原細見には天明、寛政の頃まで散茶の名が見られます。安永の頃には、太夫、格子が絶えたため、散茶が最上位となりました。

散茶女郎は、吉原の遊女の階級の中で、時代とともに変化していった興味深い存在です。その名前の由来や、料金体系、他の階級との関係など、様々な側面から当時の遊郭の様子を垣間見ることができます。

もう一度検索