敬哀皇后張氏

敬哀皇后（けいあいこうごう）は、三国時代の蜀漢の二代皇帝、劉禅（りゅうぜん）の最初の皇后です。彼女の諱（いみな：生前の本名）は ইতিহাসে記録されておらず、後世に贈られた諡号（しごう：死後に贈られる称号）である「敬哀皇后」として知られています。

彼女は幽州涿郡（現在の河北省涿州市）の出身で、蜀漢の重臣である張飛（ちょうひ）の長女として生まれました。母は、魏の将軍である夏侯覇（かこうは）の従妹にあたります。また、妹もおり、敬哀皇后の死後、劉禅の皇后となっています（こちらは一般に「張皇后」と呼ばれます）。

生涯

章武元年（221年）、劉備（りゅうび）が蜀漢の皇帝として即位すると、敬哀皇后は皇太子であった劉禅の妃として宮中に入りました。これは、劉備が張飛の娘を息子の后としたことで、蜀漢の内部における結束を固める意味合いがあったと考えられます。

建興元年（223年）、劉備の崩御後、劉禅が皇帝として即位すると、彼女は皇后に立てられました。若くして皇后という重要な地位に就き、劉禅を支える立場となります。

しかし、建興15年（237年）6月、敬哀皇后は若くして亡くなります。短い皇后としての生涯を終え、南陵（なんりょう）に葬られました。彼女の死後、妹が劉禅の皇后となり、その血筋は蜀漢の皇室と深く結びつくことになります。

三国志演義における敬哀皇后

小説『三国志演義』では、第85回に名前が登場します。劉禅の即位時に、初めて妻として迎えられ、そのまま皇后に立てられたと描写されています。この時、彼女の年齢は17歳と設定されています。

また、第115回では、皇后が劉琰（りゅうえん）の妻を引き止めて話し込んだことがきっかけで、劉琰が妻と劉禅の密通を疑うという騒動が描かれています。これはあくまで小説における創作であり、史実に基づいたものではありません。

敬哀皇后は、正史においては記録が少ない人物ですが、蜀漢の皇室と有力な武将である張飛を結びつける重要な役割を果たしました。彼女の存在は、蜀漢の政治情勢や人間関係を理解する上で、無視できない要素と言えるでしょう。

出典

* 陳寿『三国志』巻34 蜀書 敬哀皇后伝

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