敬業館

敬業館（けいぎょうかん）

敬業館は、兵庫県姫路市の林田町に位置した林田藩の藩校です。1794年に第7代藩主の建部政賢によって設立され、その独自の教育方針と文化的な価値から今日まで多くの人に親しまれています。

沿革

敬業館は創立当初から「敬業」という名が示す通り、学問を尊重し、仲間との交流を大切にした教育理念を掲げていました。この校名は古典的な文献『礼記』から引用されており、晋書からもインスパイアを受けています。校名の扁額は松平定信によって書かれ、校のシンボルである建部家の家紋「三ツ蝶」が瓦に刻まれています。

1863年には火災によって施設が焼失しましたが、藩の厳しい財政状況の中でも、儒官の生田彌六郎と郡宰の真喜多廉之助が再建を強く提唱し、その重要性が認められた結果、すぐに復興が進められました。講堂や聖廟、練武場、文庫などの施設が設けられましたが、現存するのは講堂のみです。

敬業館の特筆すべき点は、士族と庶民の共同学びの場を提供していた点です。このような試みは当時としては稀であり、士族の子弟は8歳での入学が義務つけられ、16歳で卒業していましたが、庶民の希望者に対しても受け入れを行っていました。さらに、16歳以上の者は公務の余暇を利用して学ぶことが許可されており、教育の門戸は広く開かれていました。

講堂と教育

講堂内には、藩主、教授、弟子がそれぞれ異なる玄関を持ち、格式に応じた使用がなされていました。内部は大広間と東側の三室に分かれ、格づけが行われていましたが、教授内容は士族と庶民で共通であり、特に優れた生徒は藩の費用で他国に遊学する機会も与えられていました。

第9代藩主の建部政和は、教育の充実を図るために名高い儒学者・河野鉄兜を教授として招きました。彼は他の藩からも引き抜きの申し出を受けましたが、政和の熱心な招待に感激し、林田藩のために力を尽くしました。

敬業館の閉校とその後

しかし、1871年の廃藩置県の施策により、林田藩は廃止され、敬業館もその役割を終えました。以降、講堂は敬業小学校を経て、1963年まで林田村役場として利用されることになりました。現在、講堂は姫路市役所林田出張所及び林田公民館として利用されています。

文化財

現存する講堂は1992年に姫路市の指定有形文化財に指定されており、兵庫県内では藩校の遺構としても唯一のものです。観覧は無料で、土日祝日のみ公開されています。ただし、年末年始期間は開放されていません。

関連文化財

また、周辺には三木家住宅があり、こちらも姫路市及び兵庫県によって重要有形文化財に指定されています。

このように敬業館は、単なる教育機関以上の価値を持ち、地域史に大きな影響を与えてきた重要な施設であり、今もその文化的な遺産を大切にされています。

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